柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)
出典『万病回春』
分類清熱瀉火疏肝解鬱剤
保険適用エキス製剤柴胡清肝湯(ツムラ109、クラシエ109など)
構成生薬 柴胡・黄芩・山梔子・連翹・薄荷・防風・当帰・川芎・地黄・芍薬・甘草


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能疏肝解鬱清熱瀉火養血和栄
主治 肝経に熱がこもり、上焦に炎症・発赤・かゆみなどが現れるもの。
・顔や頭部の発疹、にきび、湿疹、皮膚炎、アトピー性皮膚炎。
・咽喉炎、扁桃炎、口内炎などの炎症。
・いらいら、怒りっぽさ、不眠などの精神的症状を伴う場合も。
特に小児で多く、体力中等度~やや虚弱なタイプに用いる。
病機 情志不遂や外邪侵入により「肝気鬱結」→「肝火上炎」となり、
熱毒が上部にこもって皮膚・咽喉・目などに炎症を生じる。
柴胡・薄荷・防風が肝気を疏し、黄芩・山梔子・連翹が清熱瀉火、
当帰・川芎・芍薬・地黄が血を養い、熱で傷ついた陰血を補う。


🌡 臨床的特徴

観点内容
典型的症状 ・顔や頭皮の赤み・かゆみ・湿疹・吹き出物。
・喉の痛み・腫れ・発赤。
・のぼせ・いらいら・怒りやすい。
・口内炎・眼の充血。
・舌質は紅、苔は黄、脈は弦やや数。
体質傾向 中等度体力、やや実証~中間証。
ストレスや緊張で顔が赤くなりやすく、皮膚炎を起こしやすい。
舌診紅、薄黄苔。
脈診弦数。


💊 構成生薬と作用

生薬主要作用
柴胡(さいこ)疏肝解鬱、少陽を調和。
黄芩(おうごん)清熱燥湿、瀉火解毒。
山梔子(さんしし)清熱瀉火、解毒消炎。
連翹(れんぎょう)清熱解毒、消腫散結。
薄荷(はっか)疏散風熱、肝気を調える。
防風(ぼうふう)祛風解表、皮膚のかゆみを鎮める。
当帰(とうき)補血活血、皮膚を潤し再生を促す。
川芎(せんきゅう)活血行気、炎症部位の血行を改善。
地黄(じおう)清熱涼血、陰液を補う。
芍薬(しゃくやく)養血柔肝、鎮痙止痛。
甘草(かんぞう)調和諸薬、炎症緩和。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗炎症作用(皮膚炎・咽頭炎・扁桃炎)
  • 抗アレルギー作用(ヒスタミン抑制)
  • 抗ストレス・鎮静作用(肝気鬱結の改善)
  • 免疫調整作用(慢性炎症の鎮静化)


💬 臨床応用例

  • アトピー性皮膚炎・湿疹・にきび・脂漏性皮膚炎
  • 慢性扁桃炎・咽頭炎・口内炎
  • 小児の熱性疾患や体質改善
  • 更年期障害で怒りっぽく顔が赤くなるタイプ
  • ストレスによる肝気鬱結・神経過敏


⚖️ 類方鑑別

方剤名鑑別点
竜胆瀉肝湯下焦(泌尿・生殖器系)の湿熱が主体。尿トラブル・下腹部痛。
黄連解毒湯全身の実熱・強い炎症・のぼせに用いる。
加味逍遙散虚弱で冷えを伴う場合。熱よりも気滞や情緒不安が中心。
清上防風湯顔面(特ににきび・皮膚炎)主体で実証傾向が強い。


⚠️ 使用上の注意

  • 冷え性で虚弱な人にはやや刺激が強いことがある。
  • 乾燥肌・皮膚のつっぱりがある場合は加減を要する。
  • 服用中に口渇・下痢が出る場合は減量または中止。


📖 メモ(臨床的要点)

  • 「肝気鬱結+肝火上炎」型の皮膚疾患・炎症に最適。
  • 炎症を鎮めながら、血を養って皮膚の再生を助ける。
  • 小児・若年者の体質改善にもよく使われる。
  • ストレス・怒り・いらだちによる顔面紅潮・皮膚症状に効果的。

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