概念
益気生津（えっきしょうしん）とは、気を補って津液（しんえき）を生じさせ、口渇・咽乾・多飲・倦怠などの気陰両虚による症状を改善する治法である。 気は津液の生化と輸布を主るため、気虚になると津液の生成が減少し、さらに津液の布散も滞る。 その結果、口渇・咽乾・自汗・疲労感・脈虚などが現れる。 したがって本法は、益気を本とし、生津を従とすることで、気津の双補を図る治法である。
所属
補気法（ほきほう）と生津法（しょうしんほう）の併用法に属する。
効能
- 気を益して津液の生化を促す（益気生津）。
- 陰液を滋し、咽喉・皮膚・粘膜の乾燥を潤す（滋陰潤燥）。
- 脱水や消耗後の体液不足を回復させる（復津止渇）。
- 虚熱を清め、疲労や口渇を緩和する。
主治
- 気陰両虚：口渇・咽乾・倦怠・息切れ・自汗・脈虚。
- 熱病後期の津傷：高熱後の虚脱・多飲・口乾舌燥。
- 消渇（しょうかつ）：糖尿病様症状（口渇・多飲・尿多・体力低下）。
- 久病虚労：気虚を本とし、陰液が損傷した慢性虚症。
病機
津液の生化は脾肺の気に依存しており、気虚によって津液が生成・運行できなくなると、乾燥と渇が生じる。 また、熱病や久病で陰液が損傷すると、津液不足がさらに悪化する。 そのため治法は、益気を主とし、生津を助けることで、気津双補を行う。 代表的病機は以下の通り。
- 気虚 → 津液生化不足 → 口渇・倦怠・自汗。
- 熱邪損津 → 気陰両傷 → 口咽乾燥・多飲・舌紅少苔。
代表方剤
- 生脈散（しょうみゃくさん）：益気生津・斂陰止汗。熱病後の気陰両虚・口渇・自汗・虚脱に用いる。
- 竹葉石膏湯（ちくようせっこうとう）：清熱生津・益気和胃。熱病後期の虚煩口渇・気逆嘔吐に適す。
- 人参養栄湯（にんじんようえいとう）：補気養血・益気生津。慢性疲労や虚労に応用される。
- 清暑益気湯（せいしょえっきとう）：益気清暑・生津止渇。夏季の暑気あたり・脱水・倦怠に用いる。
臨床応用
- 熱病回復期・発汗過多・下痢後の体液損失。
- 糖尿病・慢性疲労症候群・虚脱体質。
- 夏季の脱水・熱中症予防。
- 発熱後の咽乾・動悸・息切れなどの気陰両虚状態。
使用上の注意
- 湿滞や痰湿が著しい場合には、補気薬の甘潤が症状を悪化させるため慎用する。
- 単なる陰虚による津枯には、滋陰生津薬（麦門冬湯など）を選ぶ。
- 外感未解の発熱時には、補気薬の使用を控える。
まとめ
益気生津法は、気を補って津液を回復させる治法であり、 熱病後や慢性消耗による口渇・倦怠・虚熱などに有効である。 代表方剤は生脈散・竹葉石膏湯・清暑益気湯などで、 気陰両虚の調整と体液の回復を目的とする。
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