温胆とは

概念

「温胆」とは、字義的には「胆を温める」という意味だが、 中医学では単に温めるというよりも、胆胃の機能を調整し、痰熱を化し、心神を安定させることを指す。 すなわち、温胆とは「胆気を和し、痰熱を除く」治法の総称である。


所属

理気化痰法(りきかたんほう)の一種


主な効能

  • 理気化痰胆胃の気滞を解き、痰を除く。
  • 和胃降逆胃気の逆上を鎮め、嘔吐・悪心を治す。
  • 清胆寧心:胆熱を清め、心神の不安を除く。

主治

痰熱内擾・胆胃不和により生じる症状:

  • 不眠・多夢・驚きやすい・焦燥
  • 頭重・めまい・胸悶・悪心・嘔吐
  • 痰が多く粘稠、口苦・舌苔黄膩
  • 脈は弦滑

これらは、主として痰熱が胆を擾乱し、胆気が不和となり、心神が安まらないことによって起こる。


病機解説

  • 情志不暢・思慮過多により肝気鬱結 → 気滞して湿が生じる。
  • 湿が鬱して痰となり、鬱久すれば熱を帯びて痰熱となる。
  • 痰熱が胆胃を擾乱 → 胆の清陽が昇らず、胃気が逆し、嘔気・胸悶が起こる。
  • 胆は決断を主る → 胆熱が心神を擾らすと、不安・不眠・驚悸などの精神症状を呈する。

代表方剤

  • 温胆湯(うんたんとう):理気化痰・和胃降逆・清胆寧心の代表方。
  • 加味温胆湯:温胆湯に酸棗仁・遠志・人参などを加え、安神作用を強化したもの。不眠や神経症状に適用。

現代応用

温胆法や温胆湯は、以下のような現代病に応用される。

  • 神経症、不眠症、不安障害
  • 自律神経失調症、めまい症
  • 慢性胃炎、機能性ディスペプシア
  • うつ病、心身症、更年期障害などの精神不安を伴う病態

まとめ

「温胆」とは、胆胃の気機を調え、痰熱を除いて心神を安定させる治法である。 痰熱が内にこもって心神を擾乱する際に用いられ、代表処方は温胆湯。 現代では、精神神経症状やストレス性の消化器症状などに広く応用されている。

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