木防已湯（もくぼういとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	木防已湯（もくぼういとう）
出典	『金匱要略』
分類	祛風湿・利水剤（利水通絡）
構成生薬	防已・牛膝・黄耆・当帰・川芎・甘草
方名の由来	主薬の防已（木防已）を中心とし、利水・祛風湿作用を重視して命名。

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	祛風湿・利水・通絡止痛
主治	風湿痺証・下肢浮腫 関節痛・筋肉痛・下肢のむくみ・冷え・倦怠感などを伴う。 多くは中虚（脾気虚）に湿邪が停滞して起こる。
病機	脾虚で水湿を運化できず、湿邪が経絡に停滞して痛みを生じる。 防已が利水、牛膝が下行通絡、黄耆が補気、当帰・川芎が活血・止痛の役割を担う。

💊 構成生薬と作用

生薬	主な作用
防已（ボウイ）	利水祛湿・散風止痺。浮腫・関節痛を改善。
牛膝（ゴシツ）	利水・活血・下行作用。下肢のむくみや痛みを和らげる。
黄耆（オウギ）	補気健脾。水の運化を助け、虚弱体質を補う。
当帰（トウキ）	活血・補血。血行を促進して痺痛を改善。
川芎（センキュウ）	活血行気・止痛。血流を改善し痛みを緩和。
甘草（カンゾウ）	諸薬の調和・緩急止痛。薬効を穏やかにまとめる。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
症状の特徴	・下肢の浮腫、関節痛、筋肉痛 ・冷え・倦怠感 ・軽度のむくみや重だるさ ・舌：淡、苔は白 ・脈：緩または滑
体質傾向	脾気虚弱・中虚タイプ。 体力や抵抗力が低下しており、湿邪が停滞しやすい人。

🩺 現代医学的応用

• 慢性関節リウマチの軽症期
• 膝関節痛・筋肉痛・四肢のむくみ
• 慢性浮腫（心不全・腎疾患除く）
• 虚弱体質者の関節運動時の痛みや重だるさ

⚖️ 類方・比較

方剤	鑑別点
防已黄耆湯	体力虚弱で浮腫を伴う下肢痺証に。木防已湯より下肢浮腫が目立つ。
独活寄生湯	年齢高く、慢性の関節痛・腰膝の冷え・虚弱体質に用いる。
麻杏薏甘湯	湿熱による関節痛に用いる。熱感・腫脹が強い場合。

⚠️ 使用上の注意

• 浮腫が強く、心・腎疾患による場合は医師の指導下で使用。
• 虚寒が強い人は慎重に使用する。
• 長期使用は体質や水分代謝の変化を観察すること。

📖 メモ（臨床要点）

• 「木防已湯＝脾虚湿邪による下肢痺証・浮腫」の代表方剤。
• 防已と牛膝で利水、黄耆で補気、当帰・川芎で活血止痛。
• 関節痛・筋肉痛・下肢浮腫を伴う虚弱者に特に有効。
• 中虚で湿邪が経絡に停滞するタイプに最適。