概念
利水通絡（りすいつうらく）とは、体内に停滞する水湿（痰飲・水滞・湿邪など）を排出し、経絡・気血の流れを通じさせる治法である。 水湿が経絡や臓腑に滞ると、浮腫・重だるさ、関節のこわばり、痺れ感などが生じる。 利水通絡法は、利水によって停滞した水を排泄し、通絡によって経絡や気血の流れを回復させることを目的とする。
所属
利水法および通絡法に属し、特に水滞痺・水湿停滞による疼痛に応用される。
効能
- 体内に停滞する水湿を排出する。
- 経絡・筋肉・関節の気血の流れを通じる。
- 浮腫・関節のこわばり・重だるさ・疼痛を改善する。
- 下肢のむくみ、腰背の重だるさ、痺れ感を緩和する。
主治
- 水湿停滞：浮腫、腹水、関節腫脹、重だるさ。
- 水痺：四肢関節のこわばり、疼痛、運動制限。
- 水湿停滞による下肢麻痺・倦怠感。
- 水邪内停：心下痞満、胸悶、尿量減少、体重増加など。
病機
脾の運化失調や腎陽不足、外邪の侵入などにより水湿が体内に停滞すると、経絡や臓腑が気血の流れを阻まれ、疼痛や腫脹が発生する。 利水によって停滞した水を排泄し、通絡によって経絡を通じさせることで、症状が改善される。
代表方剤
- 五苓散（ごれいさん）：利水滲湿・通絡。浮腫、水滞による頭重・下肢浮腫に用いる。
- 真武湯（しんぶとう）：温陽利水・通絡。腎陽虚による水滞、下肢浮腫、冷感に適す。
- 苓桂朮甘湯（りょうけいじゅつかんとう）：利水健脾・通絡。水湿停滞によるむくみ、関節重だるさに用いる。
- 防已黄耆湯（ぼういおうぎとう）：利水健脾・通絡。下肢浮腫、痺症、慢性関節痛に応用。
- 八味地黄丸（はちみじおうがん）：補腎温陽・利水通絡。腎虚による水滞、腰膝重だるさ、浮腫に適する。
臨床応用
- 浮腫、腹水、関節腫脹、下肢重だるさ。
- 慢性関節痛や水痺による運動制限。
- 腎陽虚・脾陽虚による水停滞。
- 心下痞満、胸悶、尿量減少など水邪内停症状。
使用上の注意
- 水滞の性質（寒湿・湿熱・腎虚水停など）を見極めて方剤を選ぶ。
- 脾虚が強い場合は健脾薬を併用する。
- 陽虚寒湿の患者には温補薬を加え、過度の利水で陰液を損なわないよう注意する。
まとめ
利水通絡法は、体内の水湿を排泄し、経絡・気血の流れを回復して疼痛・浮腫・重だるさを改善する治法である。 代表方剤は五苓散・真武湯・防已黄耆湯などで、寒湿・湿熱・腎虚の性質に応じて加減する。 利水により水邪を除き、通絡によって気血を巡らせることが治療の要点である。
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