防已黄耆湯（ぼういおうぎとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	防已黄耆湯（ぼういおうぎとう）
出典	『金匱要略（きんきようりゃく）』
分類	祛風湿剤（去風湿剤）・利水消腫剤
保険適用エキス製剤	防已黄耆湯（ツムラ28、クラシエ28など）
構成生薬	防已・黄耆・白朮・生姜・大棗

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	益気健脾、利水消腫（気を補い、脾の働きを高め、水滞を除く）
主治	体力中等度以下で、汗かき・むくみ・関節痛を訴える者。 関節の腫れや重だるさ、肥満傾向を伴う。
病機	風湿が皮膚や関節に滞り、脾虚によって水の運行が悪くなった状態。 「風湿相搏」＋「気虚」＋「水滞」が特徴。
現代的適応	関節リウマチ、変形性関節症、肥満、浮腫、メタボリック症候群、膝関節痛、慢性腎炎、心不全の軽度浮腫など

🌡 臨床的特徴

観点	内容
使用目標（証）	体力中等度以下。 汗をかきやすく、疲れやすい。 関節や下肢のむくみ、重だるさを訴える。
体質傾向	気虚・水滞型。肥満傾向。むくみ体質。
舌診	淡白で湿潤、白苔がやや厚い。
脈診	緩または弱。

💊 構成生薬と作用

生薬名	主要作用
防已（ぼうい）	利水消腫、祛風止痛。関節や下肢の水滞を除き、痛みや腫れを鎮める。
黄耆（おうぎ）	補気固表、利水。体力を補い、汗やむくみを調整。
白朮（びゃくじゅつ）	健脾燥湿、利水。脾の機能を高め、余分な水分を取り除く。
生姜（しょうきょう）	温中散寒、健胃和中。冷えや胃腸虚弱を改善。
大棗（たいそう）	補中益気、調和薬性。胃腸を保護し、他薬を調和。

🩺 現代医学的な理解

• 利尿作用・浮腫改善作用
• 抗炎症作用（関節痛・関節炎の緩和）
• 体重減少・脂質代謝改善作用
• 自律神経調整作用
• 抗酸化・免疫調整作用

⚠️ 使用上の注意

• 実証タイプ（体力が強く、炎症や熱感が強い人）には不向き。
• 汗の出ない重度の浮腫・尿量減少には効果が乏しいことがある。
• 冷えが強い場合は他方剤との併用を検討。

💬 臨床応用例

• 関節リウマチ・変形性膝関節症
• 肥満・メタボリック症候群
• 慢性浮腫・腎炎によるむくみ
• 心不全の軽度浮腫
• 関節痛・筋肉痛・倦怠感

🌱 類方鑑別

比較方剤	相違点
防已茯苓湯	同じく利水剤だが、より痰湿が強く肥満体質に用いる。
真武湯	陽虚による水滞で、冷え・下痢・むくみがある場合に適応。
五苓散	急性の水滞（頭痛・浮腫・口渇）に即効的。
防風通聖散	実証の肥満に用い、熱を伴うむくみに適応。

📖 メモ

• 「風湿相搏、汗出悪風、身重、痛」などの症状に用いる古方。
• 「汗っかきで疲れやすく、むくみや関節痛がある人」に最適。
• 現代では「肥満・関節痛・むくみ」を改善する体質改善方剤として広く用いられる。