陰液損傷とは

陰液損傷（いんえきそんしょう）とは、体を滋潤・冷却・養分補給する陰液が消耗・不足した状態を指します。陰液には血・津液・精などの広い概念が含まれ、体を潤し、熱を抑え、臓腑・筋肉・皮膚を養う働きをもちます。
陰液が損傷すると、乾燥・口渇・ほてり・便秘・不眠などの陰虚の症状が現れるようになります。

原因

• 熱邪の損傷： 高熱・温熱病・慢性の内熱により陰液が消耗する。
• 大量の発汗・下痢・嘔吐： 体液の失われる病態で陰液も減少する。
• 過労・慢性病： 長期の消耗により陰液の生成が追いつかなくなる。
• 加齢： 加齢により腎精・陰液が自然に減少する。
• 乾燥した気候・飲食不摂： 津液の不足を助長し、陰液が消耗する。

主な症状

• 口渇・咽の乾燥
• 皮膚乾燥・体のほてり・五心煩熱
• 便秘・尿少・濃縮尿
• めまい・動悸・不眠
• 筋肉のこわばり・痙攣傾向
• 舌乾燥、紅、苔少または無苔

舌・脈の所見

• 舌： 紅、乾燥、苔少または剥落
• 脈： 細・数（陰虚熱）

病理機転

• 陰液は体を潤す基盤であり、熱を冷まし、内臓機能を安定させる。
• 陰液が不足すると、体の乾燥症状や内熱・虚熱が発生する。
• 陰虚が進むと、肝・腎に影響し、陰虚内熱や虚風内動へ進展することがある。

代表的な方剤

• 六味丸（ろくみがん）： 腎陰虚の基本処方。
• 滋陰降火湯（じいんこうかとう）： 肝腎陰虚＋虚熱に。
• 百合固金湯（びゃくごうこきんとう）： 肺腎陰虚・咽乾・空咳に。
• 沙参麦門冬湯（しゃじんばくもんどうとう）： 津液不足による咳嗽に。
• 生脈散（しょうみゃくさん）： 気陰両虚に使用。

治法

• 滋陰養液： 陰液を補い、体内を潤す。
• 清熱除煩： 虚熱・内熱を鎮める。
• 生津止渇： 津液を生じて口渇・咽乾を改善する。

養生のポイント

• 過度の運動・長時間労働・夜更かしを避ける。
• 辛熱・油腻の飲食を避け、潤いのある食材（梨・蜂蜜・白木耳など）をとる。
• 乾燥した環境を避け、適度な加湿を保つ。
• 入浴・軽いストレッチなどで気血の循環を促進する。

まとめ

陰液損傷とは、熱邪・慢性消耗・脱水などにより体を潤す陰液が減少した状態です。
治療は滋陰養液・清熱除煩・生津止渇を中心に行い、生活では乾燥や消耗を避け、陰液の回復を助けることが重要です。