● 概念
気の巡行（流れ）が滞る状態で、胸脇・腹部・胸腹の張痛、胸悶、腹部膨満感などを生じます。
東洋医学では、気の運行が不調になることで血や津液の流れにも影響し、虚実混在の症状が現れやすくなります。
● 主な原因
- 情志不遂： 怒り・抑鬱・思慮過多などによる肝気鬱結。
- 飲食不節： 脾胃を傷め、気の生化が滞る。
- 慢性疾患・過労： 先天不足や後天の気血不足により気の巡行力が低下。
- 外邪の影響： 風寒湿邪などが経絡の流れを阻む場合。
● 病理機転
- 肝気鬱結 → 気滞 → 気の巡行不全 → 胸腹部の脹満・疼痛。
- 気滞長期化 → 血行や津液の運行も滞り → 虚実錯雑の症状が生じる。
- 情志の不安定やストレスがさらに気滞を悪化させる。
● 主な症状
- 胸脇・胸腹部の脹痛、圧迫感、張り感
- 胸悶、吐き気、げっぷ
- 腹部の膨満感、便秘または便秘と下痢を交互に繰り返す
- 抑鬱感、情緒不安、イライラ感
- 舌質淡または紅、苔薄白、脈弦
● 代表的な方剤
- 逍遙散（しょうようさん）： 肝気鬱結＋気滞による胸脇苦満・情緒不安に。
- 半夏厚朴湯（はんげこうぼくとう）： 気滞による胸中のつかえ感、咽中異物感に。
- 香砂六君子湯： 脾気虚＋気滞による食欲不振、胸腹膨満に。
- 柴胡疎肝散： 肝鬱気滞による胸脇苦満・抑鬱感に用いる。
● 治法
- 疏肝理気： 肝気鬱結を緩め、気の巡行を促す。
- 健脾化滞： 脾の運化を助け、気滞による胸腹の不快感を改善。
- 調気活血： 気血の運行を整え、虚実のバランスを回復する。
● 鍼灸配穴（参考）
太衝 行間 中脘 足三里 内関 膻中 合谷
● 養生の考え方
- 情志の安定、ストレス軽減、軽い運動や深呼吸で気の巡行を促す。
- 飲食は消化に良いものを心がけ、過食や冷たい食事を避ける。
- 長時間の過労や睡眠不足を避ける。
- 腹部や胸部の温めで気の巡行を補助する。
まとめ
気滞不行は、気の流れが滞り、胸脇・胸腹部の脹満感・疼痛や情緒不安などを呈する病証です。
治療の基本は疏肝理気・健脾化滞・調気活血であり、生活面では情志安定・食養生・適度な運動が重要です。
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