半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
出典『金匱要略』
分類理気化痰剤(りきけかたんざい)
保険適用エキス製剤半夏厚朴湯(ツムラ16、クラシエ16など)
構成生薬半夏・厚朴・茯苓・蘇葉・生姜


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能行気解鬱降逆化痰(気の巡りをよくし、痰をさばいて気を下げる)
主治梅核気(のどのつかえ感)、気鬱、咳嗽、胸悶、嘔気など
病機情志不快やストレスにより、気機が鬱滞し痰が生じて気道を塞ぎ、「のどにつかえる」感覚が現れる。
現代的適応ヒステリー球(咽中異物感)、不安神経症、パニック障害、咳、逆流性食道炎、更年期障害など


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)のどや胸につかえ感があり、咳や嘔気を伴う。精神的な緊張・不安・抑うつ傾向を持つ。
体質傾向中間証〜やや虚証。神経過敏でストレスに影響されやすい体質。
舌診舌質やや淡、苔白滑。
脈診弦または滑。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
半夏(はんげ)燥湿化痰、降逆止嘔。痰を除き、胃気の逆上を止める。
厚朴(こうぼく)行気除満、燥湿化痰。気滞を除き、胸腹部のつかえを解く。
茯苓(ぶくりょう)健脾利湿、寧心安神。痰湿を除き、心神の安定を助ける。
蘇葉(そよう)理気解鬱、和胃。気の巡りをよくし、鬱を晴らす。
生姜(しょうきょう)温中止嘔、調和諸薬。胃気を整え、嘔気を抑える。


🩺 現代医学的な理解

  • 自律神経の安定化(特に迷走神経・咽喉部の緊張緩和)
  • 抗不安・鎮静作用(ストレスによる身体症状を軽減)
  • 胃腸運動の正常化(胃もたれ・嘔気・逆流抑制)
  • 咽喉部の異常感覚を改善(ヒステリー球・咽喉神経症)


⚠️ 使用上の注意

  • 実証・体力のある人には不向き。
  • のどの異物感が実際の腫脹や炎症による場合は他の治療が必要。
  • 冷えやすい体質では、生姜の温性が補助的に作用するが、過度の冷えには別方剤を考慮。


💬 臨床応用例

  • のどのつかえ感(梅核気)
  • ストレス性の咳・のどの違和感
  • 不安神経症、パニック発作、動悸、息苦しさ
  • 逆流性食道炎、機能性ディスペプシア
  • 更年期障害によるヒステリー様症状


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
香蘇散気鬱が主で、咽喉症状よりも情緒不安・軽い風邪傾向。半夏厚朴湯は「つかえ感」が主。
柴朴湯半夏厚朴湯に小柴胡湯が加わった方剤。胸脇苦満や気鬱がより強い場合に用いる。
加味逍遙散精神的ストレス中心で、のどの症状が軽い。体質がより虚している。


📖 メモ

  • 「梅核気(ばいかくき)」=のどに梅の核がつかえたような感じ、が名前の由来。
  • 情緒・気の停滞による身体症状に対して代表的な方剤。
  • 現代では「心身症」や「自律神経失調症」への応用も広い。

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