熱結腸腑とは、実熱が腸腑(主に大腸)に結滞し、津液を消耗して腑気の通降が失調した状態を指します。
多くは外感熱邪や内生の実熱が裏に入って化燥し、便が乾結して排出されなくなることで発症します。
「陽明腑実」の代表的な病機の一つです。
主な原因
- 外感熱邪の裏入: 風熱・温熱邪が表から裏へ入り、腸腑に結する。
- 飲食不節: 辛辣・油膩・酒類の過食により胃腸に実熱が生じる。
- 情志鬱結: 気鬱化火により腸腑の熱が強まる。
- 津液損傷: 発汗・高熱・脱水により腸内が乾燥する。
病理機転
- 実熱が腸腑に結滞し、腑気の通降が阻害される。
- 熱邪が津液を灼傷し、便が乾燥・硬結する。
- 腸内に熱と糟粕が停滞し、腹満・疼痛を生じる。
主な症状
- 便秘(数日~十数日出ない、または硬結便)
- 腹部膨満・腹痛(拒按)
- 発熱、悪熱
- 口渇・冷飲を欲する
- 煩躁・不安感
- 尿黄・臭気の強い便
舌・脈の所見
- 舌: 紅、苔黄厚または黄燥
- 脈: 洪大・滑数、または実
関連する病証
- 陽明腑実
- 腸胃実熱
- 熱結便秘
- 実熱内盛
治法
- 瀉熱通腑: 腸腑の実熱を瀉し、通便させる。
- 軟堅潤燥: 乾結した便を軟らげる。
- 清熱泄下: 裏実の熱を速やかに排除する。
養生の考え方
- 辛辣・油膩・酒類を控える。
- 水分を十分に補給し、腸内の乾燥を防ぐ。
- 規則的な排便習慣をつける。
- 過度な発汗や脱水を避ける。
まとめ
熱結腸腑は、実熱が腸腑に結滞し、通降が失われた裏実証です。
強い便秘や腹満、発熱を伴うことが特徴で、治療は瀉熱通腑・清熱泄下を原則とします。
虚証の便秘や寒秘とは鑑別が重要で、実熱の有無が治療選択の鍵となります。
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