■ 概要
陰陽両虚とは、人体の基礎エネルギーである陰(体液・滋潤・冷却)と
陽(温煦・推動・温める力)の両方が不足した状態を指します。
陰陽は互いに依存し制御し合う関係のため、一方の虚が長期化するともう一方も損なわれ、
最終的に陰陽両虚の状態へ進展します。
特徴として、虚熱と虚寒の症状が混在することが挙げられます。
■ 主な原因
- 長期の慢性病・消耗性疾患
- 加齢による腎精の減少
- 過労・思慮過度・睡眠不足
- 過度の発汗・出血・下痢などによる生体エネルギー消耗
- 不適切な薬物(瀉下・発汗・清熱剤)の乱用
■ 主な症状
- 冷えと熱感の混在(手足は冷たいが体内は熱感)
- 倦怠無力・疲労感
- 息切れ、声が小さい、話すのが億劫
- 寝汗、五心煩熱、ほてり
- 腰膝酸軟、めまい、耳鳴り
- むくみ、尿量減少または失禁
- 不眠、動悸、健忘
■ 舌・脈の所見
- 舌:淡または紅、苔少、舌体乾または胖大
- 脈:沈細または無力、時に微数
■ 病理機転
- 陰虚が進むと、体内に虚熱が生じ陰液の不足を助長する。
- 陽虚が進むと、体の温める力が減弱し代謝低下・水濁停滞が生じる。
- 陰陽は互いに依存するため、長引くと両虚に進展。
■ 治療原則
- 補腎益精
- 滋陰補陽(陰陽雙補)
- 陰陽調和
■ 代表的方剤
| 病態 | 方剤 |
|---|---|
| 腎陰腎陽ともに不足 | 八味地黄丸+知柏、六味丸+桂附 |
| 気血陰陽の総合不足 | 十全大補湯、当帰四逆加呉茱萸生姜湯 |
| 滋陰と温陽を同時に補う | 二至丸+右帰丸/左帰丸の組み合わせ |
■ 養生のポイント
- 無理を避け、十分な休息と睡眠を確保
- 冷たいものの過剰摂取は避ける
- 香辛料・刺激物も控えめに
- 温かく消化の良い食事を中心に
- 軽い散歩・気功・太極拳で気血の巡りを調える
■ まとめ
陰陽両虚は、長期の消耗や加齢により陰液と陽気が同時に不足した状態で、
虚寒と虚熱症状が混在するのが特徴です。
治療は 滋陰補陽・益精填髄・陰陽調和 を原則とし、持続的な生活改善が大切です。
0 件のコメント:
コメントを投稿