はじめに
怒・喜・思・悲・恐――
五臓の情志は本来、一つの流れの中で循環し、自然に移り変わるものです。
しかし現実には、
- 同じことでずっと怒り続ける
- いつまでも思い悩む
- 不安から抜け出せない
といった状態が起こります。
東洋医学では、これを「感情の問題」とは捉えません。
情志の循環がどこかで止まった状態
と考えます。
本記事では、情志がどこで止まり、それがなぜ慢性化を生むのかを、構造として整理します。
情志の本来の流れは「気の循環」
情志は、怒 → 喜 → 思 → 悲 → 恐 → 怒という順に循環します。
これは単なる並びではなく、気の運動の変化を示しています。
- 発動
- 拡散
- 安定
- 収束
- 蓄積
この流れが途切れないとき、心身は柔軟に適応できます。
慢性化とは「流れが固定された状態」
情志の慢性化とは、特定の段階で気の動きが止まり、
同じ運動パターンが繰り返されること
です。
つまり慢性化とは、時間の問題ではなく、流れの停止の問題なのです。
① 怒で止まる:肝気鬱結の慢性化
■ 停止する理由
- 気が発散できない
- 上昇が持続する
■ 起こる状態
- イライラが続く
- 緊張が抜けない
- 体が常に張る
これは、発動の段階から進めない状態です。
気は動こうとし続けるため、消耗と停滞が同時に進みます。
② 喜で止まる:心火偏盛の慢性化
■ 停止する理由
- 気が拡散し続ける
- 収束できない
■ 起こる状態
- 興奮が続く
- 落ち着かない
- 睡眠が浅い
これは、外へ開きすぎたまま戻れない状態です。
神志が安定できず、消耗が進みます。
③ 思で止まる:脾気虚の慢性化
■ 停止する理由
- 気が内に停滞する
- 運化が低下する
■ 起こる状態
- 思い悩み続ける
- 決断できない
- 疲労感が強い
これは、気が集まり続けて動けない状態です。
停滞がさらなる気虚を生み、慢性化が進みます。
④ 悲で止まる:肺気虚の慢性化
■ 停止する理由
- 気が収縮しすぎる
- 外へ開けない
■ 起こる状態
- 気分が沈む
- 活力が出ない
- 呼吸が浅い
これは、収束したまま動けない状態です。
気の巡りが弱まり、さらに収縮が進みます。
⑤ 恐で止まる:腎虚の慢性化
■ 停止する理由
- 気が深く沈む
- 上昇の力が不足する
■ 起こる状態
- 不安が持続する
- 行動力が低下する
- 回復力が弱い
これは、蓄積の段階から再発動できない状態です。
生命力の土台が弱まり、慢性化が固定します。
なぜ停止すると慢性化するのか
情志の循環が止まると、
- 気の動きが単調化し
- 五臓の連携が失われ
- 自己調整力が低下します。
本来、次の段階へ移行することでバランスが保たれますが、
停止すると、同じ運動が反復され続けます。
これが慢性化の本質です。
回復とは「次の段階へ進むこと」
東洋医学における回復とは、特定の感情を消すことではありません。
目指すのは、
- 停滞を解き
- 次の気の動きを起こし
- 循環を再開させること
です。
怒が悲へ移り、悲が安心へ移るとき、循環は回復しています。
まとめ
情志の慢性化とは、特定の感情が続くことではなく、気の循環が途中で止まった状態です。
怒・喜・思・悲・恐は、それぞれ流れの一段階に過ぎません。
健康とは、どれかを排除することではなく、
情志が自然に移り変わり続けることなのです。
0 件のコメント:
コメントを投稿