熱入血室とは

熱入血室(ねつにゅうけっしつ)とは、熱邪が血室(主に衝脈・任脈に関連し、女性の胞宮=子宮を含む領域)に侵入して起こる病態を指します。
特に女性の月経期に外感熱邪が侵入したり、七情の鬱結が火化して血分に入り、血室に結して発症すると考えられます。
「血室」は女性特有の生理・妊娠・出産と密接に関わるため、熱入血室は婦人科疾患に関連してしばしば用いられる病機概念です。


原因

  • 外感熱邪: 月経時に衛気が虚し、熱邪が胞宮(子宮)や衝任に侵入する。
  • 情志鬱結: 怒り・抑うつにより肝気が鬱滞し、化火して血分に侵入する。
  • 内熱素因: 陰虚や血少により虚熱が生じ、月経期に血室へ集まる。

主な症状

  • 発熱(午後~夜に高くなることが多い)
  • 悪寒は軽度またはなし
  • 胸脇の張りや脇痛
  • 煩躁、不眠、精神的に落ち着かない
  • 月経期に症状が悪化する
  • 月経不調(経血量の異常、色が濃い、あるいは血塊)
  • 場合により譫語、意識混濁などの神明異常

舌・脈の所見

  • 舌: 舌質紅、苔は黄、または少苔。
  • 脈: 弦数、または細数。

治療方針

  • 清熱涼血: 血分の熱を冷ます。
  • 疏肝解鬱: 肝気鬱結を解き、気血の流れを整える。
  • 安神寧心: 精神不安や譫語に対応する。
  • 代表方剤:清営湯、丹梔逍遥散、加減一陰煎など。

養生・注意点

  • 月経期の過労や外感(特に風熱・温邪)を避ける。
  • 辛辣・刺激性のある食事やアルコールを控える。
  • 情志を安定させ、気血の巡りを保つ工夫をする。
  • 体質的に陰虚傾向がある場合は、滋陰の食材(百合、クコの実、麦門冬など)を取り入れる。

まとめ

熱入血室とは、熱邪が月経期に衝任や胞宮へ侵入して発症する病態で、発熱・煩躁・精神不安・月経異常などを特徴とします。
治療は「清熱涼血・疏肝解鬱・安神」を柱に、婦人科的背景や体質を踏まえて調整することが大切です。

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