寒入血室(かんにゅうけっしつ)とは、寒邪が女性の血室(衝脈・任脈・胞宮=子宮を含む領域)に侵入して発生する病態を指します。
特に月経期は血行が旺盛で衛気が外に偏りやすく、防御力が低下するため、寒邪が侵入しやすい時期とされます。
寒邪は収引・凝滞の性質をもつため、血室の気血を滞らせ、冷痛・経閉・寒熱往来などを引き起こします。
原因
- 外感寒邪: 月経期に寒冷に当たり、寒邪が胞宮・衝任に侵入する。
- 房事不節: 月経時の房事によって腠理が開き、寒邪に侵される。
- 素体陽虚: 陽気不足で温煦作用が弱く、外邪を防ぎきれず寒が血室に入る。
主な症状
- 寒熱往来(寒気と発熱が交互に現れる)
- 小腹の冷痛、圧痛
- 月経異常(経閉、経血量が少なく色が暗い、血塊を伴う)
- 悪寒、身体の冷え
- 精神不安、または軽度の神明異常
- 場合によって譫語や譫妄が出ることもある
舌・脈の所見
- 舌: 淡または暗紫、苔は白膩。
- 脈: 沈緊、または沈細。
治療方針
- 温経散寒: 血室の寒邪を追い出し、経絡を温める。
- 調和衝任: 衝脈・任脈の気血を調整し、月経を整える。
- 活血化瘀: 血滞を除き、痛みを和らげる。
- 代表方剤:小柴胡湯合当帰四逆湯、温経湯、少腹逐瘀湯など。
養生・注意点
- 月経期は特に冷えを避け、下腹部を温める。
- 月経中の入浴・冷飲・房事を控える。
- 冷性食品(スイカ、梨、きゅうりなど)の過食を避ける。
- 陽気を補う食材(生姜、ねぎ、桂皮、羊肉など)を取り入れる。
まとめ
寒入血室とは、月経期や陽虚体質時に寒邪が血室に侵入し、気血を凝滞させて発症する病態です。
治療は「温経散寒・調和衝任・活血化瘀」を基本とし、養生では冷えを避けて子宮を温養することが重要です。
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