胃火上炎とは

胃火上炎(いかじょうえん) とは、胃に生じた火熱が上に逆って頭顔・口腔・咽喉に炎症症状を及ぼす病態を指します。
胃は陽明経に属し、気血が盛んなため火熱が生じやすく、これが上炎すると「歯痛・口臭・歯肉腫脹」など、口腔領域の熱症が顕著に現れます。


原因

  • 飲食の不摂生: 辛辣・油っこい食物、アルコール、甘味の過剰摂取により胃に火熱がこもる。
  • 情志の不調: ストレスや怒りが肝火を生じ、それが胃に波及して火を助長する。
  • 外感熱邪: 外邪の熱が陽明経に侵入して火熱化する。

主な症状

  • 激しい歯痛(熱で増悪し、冷却で軽減)
  • 歯肉の腫脹・発赤・出血
  • 口内炎、咽喉腫痛
  • 口渇、口臭
  • 食欲亢進、大食
  • 便秘、尿が黄色く少ない
  • 顔面紅潮、煩躁

舌・脈の所見

  • 舌: 舌質紅、苔は黄厚
  • 脈: 洪数、滑数

代表的な方剤

  • 清胃散(せいいさん): 胃火上炎による歯痛・歯肉腫脹・口臭に広く用いられる。
  • 玉女煎(ぎょくじょせん): 胃火が盛んで、腎陰虚を伴う歯痛・歯肉出血に適する。
  • 黄連解毒湯(おうれんげどくとう): 火熱が強く煩躁や出血を伴う場合に用いる。

養生の考え方

  • 辛いもの・油っこいもの・アルコール・甘味を控える
  • 清熱作用のある食材(ゴーヤ、緑豆、梨、セロリなど)を取り入れる
  • 口腔ケアを心がけ、熱がこもらないようにする
  • ストレスを溜めず、気の流れを整える生活を心がける

まとめ

胃火上炎とは、胃に生じた火熱が上逆し、主に口腔・歯肉・咽喉に炎症症状をもたらす病態です。
典型的には「歯痛・歯肉腫脹・口臭・口渇」を特徴とし、治療・養生の基本は「清胃瀉火」「養陰生津」にあります。
食生活の改善とストレスの緩和が予防と改善に重要です。

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