黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
出典『外台秘要方』
分類清熱瀉火剤(せいねつしゃかざい)・清熱解毒剤
保険適用エキス製剤黄連解毒湯(ツムラ15、クラシエ15など)
構成生薬黄連・黄芩・黄柏・山梔子


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能清熱瀉火解毒
主治全身の実熱・火毒による諸症状。
顔面紅潮、口渇、煩躁、不眠、出血傾向、炎症性疾患など。
病機熱邪が三焦(上・中・下焦)に充満し、心火・胃火・肝火が旺盛となり、
火毒として内外に炎症・出血・発熱を引き起こす。
現代的適応高血圧症、鼻出血、皮膚炎、湿疹、じんま疹、胃炎、口内炎、不眠、神経症、のぼせ、イライラなど。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)実証で熱盛。顔面紅潮、目の充血、口渇、便秘、尿赤。
舌質紅、舌苔黄厚。煩躁・不眠・出血などを伴う。
体質傾向実熱体質。のぼせやすく、興奮しやすい。炎症・出血傾向あり。
舌診紅、黄苔または焦黄苔。
脈診数・実・有力。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
黄連(おうれん)清心瀉火、燥湿解毒。上中焦の火を清す。
黄芩(おうごん)清熱燥湿、瀉火解毒。上焦(肺・胆)の熱を除く。
黄柏(おうばく)清熱燥湿、瀉火解毒。下焦(腎・膀胱)の熱を冷ます。
山梔子(さんしし)瀉火除煩、清熱解毒。心火を冷まし、全身の熱を鎮める。


🩺 現代医学的な理解

  • 抗炎症・抗菌作用(皮膚炎・胃炎・膀胱炎などに)
  • 抗アレルギー作用(皮膚疾患・湿疹・蕁麻疹に)
  • 鎮静・精神安定作用(興奮・不眠に)
  • 血圧降下・抗動脈硬化作用
  • 肝機能改善・解毒促進作用


⚠️ 使用上の注意

  • 虚証・冷え体質の人には不向き。
  • 長期連用により食欲低下・下痢を起こすことがある。
  • 胃腸虚弱者は注意して使用する。
  • 清熱剤のため、過度に服用すると陰液を損なうことがある。


💬 臨床応用例

  • 皮膚炎、湿疹、にきび、酒さ、じんま疹
  • 高血圧・動脈硬化・脳血管障害の予防
  • 胃炎、口内炎、咽喉炎、膀胱炎、肝炎
  • 不眠、神経過敏、のぼせ、イライラ、怒りやすい
  • 出血傾向(鼻血・吐血・歯肉出血など)


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
三黄瀉心湯便秘を伴う強い実熱に用いる。大黄を加えて下焦の熱を瀉す。
白虎湯気分(体表)の強い熱に用いる。口渇・大熱・多汗など。
温清飲黄連解毒湯に四物湯を合わせ、血虚・瘀血を伴う実熱に用いる。
竜胆瀉肝湯下焦(泌尿生殖器系)の湿熱に適す。尿の異常や下肢の熱感が特徴。


📖 メモ

  • 古来「熱毒三焦に盛んなるを治す」方として知られる。
  • 黄連・黄芩・黄柏・山梔子の4味すべてが「苦寒」で、熱を徹底的に冷ます。
  • 「実熱」「炎症」「興奮性」「のぼせ」などの症状に適応。
  • 温清飲・三黄瀉心湯など、多くの応用方の基礎となる重要処方。
  • 体力のある実証タイプに適し、冷えや虚には禁忌。

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