脾不統血(ひふとうけつ) とは、脾の「統血作用」(血が血管外に漏れないように制御する働き)が低下した状態を指します。
脾気が不足することで、血を管の中に留める力が弱まり、出血傾向が目立つのが特徴です。
原因
- 脾気虚の持続: 長期間の脾気虚が改善されず、統血作用が低下。
- 慢性の出血: 繰り返す出血によって気血が消耗し、さらに脾の力が弱まる。
- 不摂生な飲食: 過食・偏食・冷飲食によって脾の働きが損なわれる。
- 過労や思慮過多: 脾は「思」に属し、考えすぎや労働過多で脾気が損傷。
主な症状
- 皮下出血・紫斑
- 歯ぐきや鼻からの出血
- 血便・血尿・不正性器出血
- 月経過多、経期の延長
- 顔色が淡白、倦怠感、食欲不振
舌・脈の所見
- 舌: 淡舌、舌苔は薄い
- 脈: 細弱(細くて弱い)
代表的な方剤
- 帰脾湯(きひとう): 脾気虚による統血失調、不眠や健忘を伴う場合。
- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう): 気血両虚を補い、慢性出血や体力低下に用いる。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう): 気虚が甚だしく、内臓下垂や慢性疲労を伴う場合。
養生の考え方
- 過労を避け、十分な休養をとる
- 冷たい飲食や暴飲暴食を控える
- 気血を補う食材(なつめ、黄耆、黒豆、ほうれん草など)を摂取する
- 精神的ストレスを減らし、脾への負担を軽減する
まとめ
脾不統血とは、脾の統血作用が低下し、さまざまな出血症状を伴う病態です。
健脾益気と統血を基本とし、生活習慣・食養生の見直しを合わせて行うことが大切です。
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