補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
出典『内外傷弁惑論』(李東垣)
分類補気剤(ほきざい)・升陽益気剤(しょうようえっきざい)
保険適用エキス製剤補中益気湯(ツムラ41、クラシエ41など)
構成生薬人参・黄耆・白朮・当帰・陳皮・柴胡・升麻・大棗・甘草・生姜


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能補中益気、升陽挙陥(脾胃を補い、下がった気を上げる)
主治体力虚弱、倦怠感、食欲不振、疲れやすい、下痢、無気力。
脱肛・子宮下垂・胃下垂など「気虚下陥」を伴う症状。
病機脾胃の気虚により、気の運行が弱まり、陽気が下陥して全身の働きが低下。
現代的適応慢性疲労症候群、術後・病後の体力低下、虚弱体質、食欲不振、低血圧、胃下垂、子宮脱、慢性疾患の回復補助など


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力がなく、疲れやすく、声に力がない。
食欲不振、倦怠感、元気が出ない。
下垂・脱肛・長引く病後など。
体質傾向気虚体質(虚証)。やせ型で、顔色が淡白・声が小さい。
舌診淡白、薄い白苔。
脈診虚・弱。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
人参(にんじん)大補元気、健脾益気。疲労・虚弱を改善。
黄耆(おうぎ)補気固表、挙陥。免疫力を高め、下垂を改善。
白朮(びゃくじゅつ)健脾益気、利水。胃腸を整え、水滞を除く。
当帰(とうき)補血活血。血の巡りを良くし、滋養する。
陳皮(ちんぴ)理気健脾。胃腸の働きを助け、気滞を除く。
柴胡(さいこ)・升麻(しょうま)升陽挙陥。下がった陽気を上げる。
大棗(たいそう)・甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう)補中和胃、調和諸薬。脾胃を守り、全体を整える。


🩺 現代医学的な理解

  • 免疫賦活作用(免疫力の強化)
  • 抗疲労・抗ストレス作用(自律神経の安定化)
  • 食欲増進・胃腸機能改善作用
  • 血圧調整作用(低血圧の改善)
  • 抗炎症・抗酸化作用
  • 手術後やがん治療後の体力回復促進


⚠️ 使用上の注意

  • 実証・熱証の人には不向き(のぼせ・口渇・便秘を起こすことがある)。
  • 過剰服用により胃もたれを起こすことがあるため、適量服用を守る。
  • 慢性疾患で服用する場合は医師・薬剤師に相談を。


💬 臨床応用例

  • 慢性疲労、無気力、倦怠感
  • 食欲不振、胃下垂、脱肛、子宮下垂
  • 低血圧、めまい、立ちくらみ
  • 病後・術後の回復期、虚弱児、産後の体力回復
  • がん・慢性疾患の補助療法(体力維持目的)


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
六君子湯脾胃気虚に加え、痰湿がある場合(胃もたれ・吐き気)。
十全大補湯気血両虚で、より虚が強い場合。冷えや貧血を伴う。
人参湯脾胃虚寒が主で、冷えや下痢を伴う場合。
黄耆建中湯気虚+虚熱・自汗を伴う虚弱児などに適応。


📖 メモ

  • 「虚労の聖薬」と称されるほどの代表的な補気剤。
  • 気を補うだけでなく、下がった気を上げる「挙陥」の作用がある。
  • 「疲れやすい・気力が出ない・胃腸が弱い・声に力がない」人に最適。
  • 現代では、がん・手術・感染症後の体力回復や慢性疲労にも広く応用される。

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