帰脾湯(きひとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名帰脾湯(きひとう)
出典『金匱要略』
分類補気補血・養心安神剤
保険適用エキス製剤帰脾湯(ツムラ76、クラシエ76など)
構成生薬人参・黄耆・白朮・当帰・茯苓・酸棗仁・遠志・竜眼肉・木香・甘草・生姜・大棗


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能補気養血健脾養心安神定志
主治心脾両虚による倦怠感、動悸、不眠、健忘、食欲不振、顔色不良、めまいなど。
病機脾気不足により心血が養われず、心神が安らがない状態。脾虚血虚による心神不安が主症状。
現代的適応心身疲労、不眠症、神経症、過労、慢性病後の倦怠感、貧血、PMS、更年期障害、うつ症状など。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度〜やや虚。
脾気虚弱心血不足により動悸・不眠・健忘・食欲不振を伴う。
精神的不安定が強い場合に用いる。
体質傾向やせ型〜中肉中背、疲れやすく、情緒不安定。
過労や慢性病後に体力低下・血虚症状を呈する。
舌診淡白舌、苔薄白または少苔。
脈診細弱または虚弱、場合により弦細。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
人参・黄耆・白朮補気健脾、増強作用。脾胃を補い気血生化を助ける。
当帰・竜眼肉・酸棗仁・遠志補血養心、安神作用。心血不足による不眠・動悸を改善。
茯苓・甘草・生姜・大棗脾胃調和、心神安定、緩急止痛、薬性の調和。
木香理気健脾、消化促進。胸腹の気滞・食欲不振に対応。


🩺 現代医学的な理解

  • 中枢神経系調整作用:不安・緊張・不眠の改善
  • 自律神経調整作用:心拍数安定、消化器系の働き向上
  • 血液循環改善:めまい・倦怠感の軽減
  • 抗ストレス作用・疲労回復
  • 消化吸収促進作用(食欲不振・栄養不足改善)


⚠️ 使用上の注意

  • 体力虚弱で寒証の強い人は慎重投与。
  • 過剰に使用すると下痢や食欲不振を悪化させる場合がある。
  • 甘草含有のため、長期多用で偽アルドステロン症に注意。


💬 臨床応用例

  • 慢性疲労・過労による倦怠感
  • 動悸・息切れ・不眠・健忘
  • 慢性病後の回復期サポート
  • PMS・更年期障害による心身症状
  • 軽度うつ症状や神経症の補助療法
  • 食欲不振・消化不良


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
補中益気湯脾気虚を中心に補う。心血不足や不眠は主目的でない。
加味帰脾湯帰脾湯に酸棗仁・遠志など安神薬を加え、精神症状をより強調。
酸棗仁湯心陰不足による不眠に特化。脾虚症状が少ない場合に用いる。
加味逍遙散肝鬱血虚による精神不安・更年期症状に使用。脾虚不全は主目的でない。


📖 メモ

  • 心脾両虚に基づく不眠・動悸・倦怠感を改善する代表的補剤。
  • 中医臨床で「虚労後・慢性病後の回復方」として重用。
  • 脾を補い血を生じ、心神を安定させる「補気養血・健脾安神」の作用が中心。
  • 体力中等度の虚弱者向きで、虚証に強く、長期使用も比較的安全。
  • 加味帰脾湯は帰脾湯をベースにしてより安神作用を強化した方剤。

0 件のコメント:

コメントを投稿