痰飲犯肺とは

痰飲犯肺（たんいんはんはい） とは、痰飲（水湿が停滞して形成された痰）が肺に侵入・停滞し、肺の宣発粛降機能を阻害する病証です。
肺は痰の貯蔵を好まず、痰飲が犯すことで呼吸器症状が顕著に現れます。

原因

• 脾失健運： 脾の運化不全によって痰飲が生じ、それが肺に上犯する。
• 外感寒湿： 外邪が肺を侵襲し、痰飲の停滞を助長する。
• 肺気虚弱： 肺の宣発粛降が弱まり、痰飲を排出できずに停滞する。

主な症状

• 咳嗽、痰が多く薄く泡沫状
• 喘鳴、呼吸困難
• 胸悶、胸苦しさ
• 咽喉に痰がからみ、音がする
• 体を動かすと息切れが悪化
• 場合によっては悪寒や無汗を伴う

舌・脈の所見

• 舌： 淡胖、苔は白滑
• 脈： 沈滑、または濡

代表的な方剤

• 小青竜湯（しょうせいりゅうとう）： 痰飲が肺を犯し、水様痰・咳嗽・喘鳴を呈する場合。
• 苓桂朮甘湯（りょうけいじゅつかんとう）： 胸中に痰飲が停滞し、咳嗽やめまいを伴う場合。
• 二陳湯（にちんとう）： 痰湿が肺に停滞し、痰が多く咳嗽が続く場合。

養生の考え方

• 冷たい飲食や脂っこい食事を避け、痰湿の生成を防ぐ
• 呼吸を整える軽い運動で肺気を巡らせる
• 湿気の多い環境を避け、体を冷やさない
• 健脾化痰・温肺利水の食材（生姜、陳皮、はと麦、大根など）を取り入れる

まとめ

痰飲犯肺とは、痰飲が肺に侵入し宣発粛降を妨げることで、咳嗽・痰多・喘鳴・胸悶などを引き起こす病証です。
治療の基本は「温化痰飲・宣肺平喘」であり、痰飲を取り除き、肺の働きを回復させることが重要です。