温経湯(うんけいとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名温経湯(うんけいとう)
出典『金匱要略』
分類温経散寒・養血調経剤(おんけいさんかん・ようけつちょうけいざい)
保険適用エキス製剤温経湯(ツムラ108、クラシエ108など)
構成生薬当帰・芍薬・川芎・人参・桂枝・牡丹皮・呉茱萸・半夏・麦門冬・阿膠・甘草・生姜


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能温経散寒養血調経(寒を除き、血を補い、経脈を温めて調える)
主治月経不順、月経痛、不妊症、更年期障害、手足のほてり、口唇乾燥など
病機衝任虚寒・血瘀・陰虚が併存し、血行が悪化して経脈が失調する。
現代的適応冷え症、月経不順、月経困難症、更年期障害、不妊症、習慣性流産、手足のほてり、皮膚乾燥など


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)下腹部が冷えるのに、手足や顔はほてる。唇や口が乾く。月経不順・月経痛・不妊などを伴う。
体質傾向虚証傾向で、冷えと血行不良、陰虚を併せ持つタイプ。
舌診舌質淡または紅、苔薄または少苔。
脈診沈細または弦細。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
当帰(とうき)補血・活血・調経。血を補い巡らせる。
芍薬(しゃくやく)養血柔肝、止痛。月経痛を軽減。
川芎(せんきゅう)活血行気。血行を促進し瘀血を除く。
人参(にんじん)益気健脾。全身の気血を補う。
桂枝(けいし)温経散寒、通陽化気。寒を除き血行を促進。
牡丹皮(ぼたんぴ)清熱涼血、活血化瘀。瘀血を除いて炎症を鎮める。
呉茱萸(ごしゅゆ)温中散寒、止痛。冷えによる痛みを改善。
半夏(はんげ)燥湿化痰、和胃止嘔。消化器を整える。
麦門冬(ばくもんどう)養陰生津、潤燥。陰液を補い乾燥を防ぐ。
阿膠(あきょう)補血止血、滋陰潤燥。血虚と陰虚を改善。
甘草(かんぞう)調和諸薬、緩急止痛。全体の調整役。
生姜(しょうきょう)温中散寒、調和胃気。冷えを除き消化を助ける。


🩺 現代医学的な理解

  • 末梢血流改善作用(冷え・瘀血の改善)
  • ホルモンバランス調整作用(卵巣機能改善)
  • 自律神経安定化作用(更年期・PMS症状の緩和)
  • 滋養強壮・造血促進作用


⚠️ 使用上の注意

  • 体力が極端に低下している場合や、著しい実熱・炎症のある場合は不適。
  • 冷えを伴わない実熱体質では使用を避ける。
  • 阿膠や人参が含まれるため、消化機能が著しく低下している場合は注意。


💬 臨床応用例

  • 月経不順・無月経・不妊症・更年期障害
  • 冷えのぼせ、手足のほてり、口唇乾燥
  • 皮膚乾燥・唇の荒れ・末端冷え性
  • 婦人科系慢性疾患(卵巣機能低下、月経痛など)


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
当帰芍薬散冷えや水滞が主で、のぼせや乾燥は少ない。温経湯は血虚・瘀血・陰虚が併存。
桂枝茯苓丸瘀血が主で、熱・のぼせを伴う実証傾向。温経湯は虚寒体質に使用。
加味逍遙散ストレスや情緒不安が中心。温経湯は冷え・血虚を伴う。


📖 メモ

  • 「温経」とは「経脈を温める」という意味で、女性の冷え症や月経異常の代表方剤。
  • 虚寒と陰虚・血虚・瘀血が混在する複雑な病態に適応。
  • 婦人科だけでなく、皮膚の乾燥・冷えのぼせなどにも応用される。

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