肺腎陰虚(はいじんいんきょ) とは、肺陰と腎陰の両方が不足し、津液が枯渇して熱が内生した状態を指します。
肺の清粛作用と腎の納気作用がともに弱まり、空咳や少痰、息切れ、喉や胸の乾燥感、潮熱や盗汗などが現れます。
原因
- 慢性の肺疾患: 長期の咳嗽や喘息により肺陰が損傷し、やがて腎陰も消耗。
- 過労や虚労: 慢性的な疲労・過労により陰精が損傷し、肺腎両虚を招く。
- 加齢: 年齢とともに腎陰が自然に減少し、肺陰も養われなくなる。
- 飲食不摂生: 辛燥の食べ物や喫煙・飲酒が陰を損傷し、肺腎に熱を生じる。
主な症状
- 空咳・痰が少なく粘り、または血痰
- 声のかすれ、咽喉や胸の乾燥感
- 息切れ、呼吸が浅く納気困難
- 午後や夜間の潮熱、盗汗
- 手足のほてり、五心煩熱
- 腰膝のだるさ・無力感
舌・脈の所見
- 舌: 舌質紅、苔少または無苔、乾燥
- 脈: 細数
代表的な方剤
- 百合固金湯(びゃくごこきんとう): 肺腎陰虚による空咳・咽喉の乾燥に。
- 滋陰降火湯(じいんこうかとう): 潮熱・盗汗・咽の乾きに。
- 六味地黄丸(ろくみじおうがん): 腎陰虚の基礎方剤として肺腎陰虚にも応用。
養生の考え方
- 辛い・燥熱性の食べ物や喫煙・飲酒を避ける
- 肺腎を滋養する食材(黒ごま、くるみ、山薬、百合根、梨、蜂蜜など)を摂る
- 睡眠と休養をしっかりとり、陰の消耗を防ぐ
- 深呼吸や軽い運動で肺と腎の気を調える
まとめ
肺腎陰虚とは、肺陰と腎陰が不足し、乾燥・熱症状と納気障害を特徴とする病態です。
咳・咽の乾き・潮熱・盗汗・腰膝のだるさなどが現れ、治療は滋陰潤肺・補腎益精を基本とします。
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