肺腎両虚(はいじんりょうきょ) とは、肺と腎の両方の機能が低下した虚弱状態を指します。
肺は「気を主り」、腎は「納気(呼吸を引き込む力)」を司るため、両者の虚損により呼吸が浅く、息切れ・咳嗽・倦怠感などが生じます。
慢性の呼吸器疾患や長期の虚弱体質、加齢などにより発生しやすく、「上虚(肺)と下虚(腎)」が互いに助け合えなくなった病態です。
原因
- 慢性の咳嗽や喘息: 肺気が損傷し、さらに長引くことで腎気をも消耗する。
- 加齢による衰退: 腎気の減退により納気が弱まり、肺の呼吸機能が低下する。
- 久病による臓虚: 長期の慢性疾患により肺・腎の気陰がともに損傷される。
- 過労・睡眠不足: 腎精の消耗や肺気の衰えを助長する。
- 寒邪・風邪の侵入: 慢性気道炎症により肺腎の気がさらに虚する。
主な症状
- 息切れ・呼吸が浅く長く続けられない
- 動くと息苦しい・疲れやすい
- 咳が長引く・痰が少ないまたは粘りが強い
- 声が小さい・話すのが億劫
- 腰や膝がだるい・冷えやすい
- 耳鳴り・めまい・顔色が白い
- 夜間の咳や喘息発作、または夜間頻尿
舌・脈の所見
- 舌: 淡または淡紅、苔は薄白、湿潤またはやや乾燥
- 脈: 沈細または虚弱
代表的な方剤
- 参蛤湯(じんごうとう): 肺腎両虚による慢性咳嗽や喘息に。
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう): 気虚による倦怠・息切れに。
- 六味地黄丸(ろくみじおうがん): 腎陰虚を伴う肺腎両虚に適する。
- 金匱腎気丸(きんきじんきがん): 腎陽虚が顕著で冷えを伴う場合に。
- 人参養栄湯(にんじんようえいとう): 気血両虚・慢性体力低下の改善に。
養生の考え方
- 無理をせず十分な休息をとる
- 冷気を避け、特に腰・背・のどを冷やさない
- 乾燥を防ぎ、加湿・水分補給を心がける
- 深呼吸や気功などで肺腎の気を整える
- 黒豆・山芋・クコの実・銀耳(白きくらげ)など肺腎を補う食材をとる
まとめ
肺腎両虚とは、肺の「宣発・粛降」と腎の「納気」の両機能が低下し、呼吸や全身のエネルギー代謝が衰えた状態です。
治療・養生の基本は「補腎益気」と「益肺養陰」であり、肺と腎の両面から根本的な虚弱を改善することを目的とします。
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