四苓湯(しれいとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名四苓湯(しれいとう)
出典《太平恵民和剤局方》
分類利水滲湿剤
構成生薬 猪苓(ちょれい)・茯苓(ぶくりょう)・沢瀉(たくしゃ)・白朮(びゃくじゅつ)
方名の由来 五苓散(ごれいさん)から「桂枝」を除いたため、4つの苓(茯苓・猪苓・沢瀉・白朮)から成ることより「四苓湯」と名づけられた。


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能利水滲湿健脾滲湿止渇
主治 水湿内停による小便不利、口渇、浮腫、下痢、尿量減少など。
特に「桂枝」の温通発表作用を除いたため、
発汗させる必要がなく、純粋に利水排湿を目的とする。
病機 水湿が脾・腎に停滞して、運化不利・気化障害を起こし、
小便不利や浮腫・下痢などが生じる。


💊 構成生薬と作用

生薬主な作用
沢瀉(たくしゃ)利水滲湿の主薬。腎を通じて水分代謝を促進。
猪苓(ちょれい)利尿・清熱・滲湿作用。湿熱の滞りを除く。
茯苓(ぶくりょう)健脾滲湿・利水・安神。脾を助けて湿を除く。
白朮(びゃくじゅつ)健脾益気・燥湿利水。脾の運化を助けて水湿の根を断つ。


🌡 臨床的特徴

観点内容
症状の特徴 尿量減少、むくみ、口渇、下痢、吐き気、重だるさ。
表証(発熱・悪寒)はないか、すでに解消している。
体質傾向 湿が停滞しやすく、脾虚または腎気不利の体質。
暑さや湿気で悪化しやすい。
脈証・舌象 脈:沈緩または滑。
舌:淡胖、苔は白滑または厚白。


🩺 現代医学的応用

  • むくみ(浮腫)
  • ネフローゼ、腎炎、膀胱炎
  • 下痢・嘔吐(胃腸型)
  • 水様便や尿量減少を伴う消化不良
  • 暑気あたり、水あたり
  • 妊娠浮腫


⚖️ 類方・比較

方剤特徴・鑑別点
五苓散四苓湯+桂枝。表証があり、悪寒や頭痛を伴うときに用いる。
猪苓湯利水に加え、清熱・止渋作用があり、尿の灼熱感・血尿を伴うときに適す。
真武湯利水とともに温陽を重視し、冷え・下痢・倦怠が強い場合に用いる。
苓桂朮甘湯水滞とともに気逆(めまい・動悸)を伴う場合に適す。


⚠️ 使用上の注意

  • 発汗・表証が残っている場合は五苓散を選ぶ。
  • 体力が極端に低下している場合は慎用。
  • 冷えが強い場合は温陽薬との併用を検討する。


📖 メモ(臨床要点)

  • 「桂枝を除いた五苓散」=純粋な利水剤。
  • 発汗作用が不要な段階、または虚証傾向の水滞に適す。
  • 脾虚による湿滞・浮腫・尿不利の基本方。
  • 暑気あたりや水分代謝不良の初期治療にも用いられる。

0 件のコメント:

コメントを投稿