五苓散(ごれいさん)

📘 基本情報

項目内容
方剤名五苓散(ごれいさん)
出典『傷寒論』・『金匱要略』
分類利水滲湿剤(体内の水滞・水逆を調整する)
保険適用エキス製剤五苓散(ツムラ17、クラシエ17など)
構成生薬 沢瀉・茯苓・猪苓・白朮・桂枝


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能利水滲湿温陽化気
主治 体内の水分代謝障害による水滞(水毒)。
・むくみ、めまい、頭痛、吐き気、下痢、口渇、小便不利など。
・また、口渇して水を飲んでも吐いてしまうような「水逆」にも用いられる。
・二日酔いや急性胃腸炎、メニエール病などにも応用される。
病機 水湿が体内に停滞し、水の流れが滞ることで、気機が阻まれ、
「上ではめまい・頭痛・吐き気」「下ではむくみ・小便不利」となる。
桂枝が陽気を通じ、水の化を助け、沢瀉・猪苓・茯苓・白朮が水をさばく。


🌡 臨床的特徴

観点内容
典型的症状 ・めまい、頭痛、吐き気、口渇、小便減少
・浮腫、下痢、むくみ、尿が濁る
・二日酔い、乗り物酔い、急性胃腸炎
・水を飲んでもすぐ吐く(水逆)
・舌が湿って白苔、脈は浮または滑
体質傾向 水分代謝が悪く、むくみやすい・頭重・めまいしやすい体質。
舌診淡白、白湿苔。
脈診浮または滑。


💊 構成生薬と作用

生薬主要作用
沢瀉(たくしゃ)利尿・清熱。体内の余分な水を排出。
茯苓(ぶくりょう)利水健脾。水分代謝を整える。
猪苓(ちょれい)利尿滲湿。下焦の水滞を改善。
白朮(びゃくじゅつ)健脾利水。脾の機能を助けて水分代謝を正常化。
桂枝(けいし)温陽化気。気を巡らせて水の流れを促す。


🩺 現代医学的な理解

  • 利尿作用による体液バランスの調整(浮腫・水腫の改善)
  • 前庭系への作用(めまい・メニエール病に有効)
  • 抗炎症作用・胃腸調整作用(急性胃腸炎、二日酔いなど)
  • 脳圧・内耳圧の低下作用(頭重感・耳鳴り改善)


💬 臨床応用例

  • めまい、耳鳴り、頭重感、メニエール病。
  • むくみ、浮腫、下痢、尿不利。
  • 二日酔い、嘔吐、乗り物酔い。
  • 急性胃腸炎、熱中症、脱水による頭痛。
  • 水中毒、慢性腎炎などの補助療法。


⚖️ 類方鑑別

方剤名鑑別点
猪苓湯水滞に熱が加わった場合(排尿痛・口渇・発熱など)。
真武湯水滞に寒が加わった場合(冷え、倦怠感、下痢など)。
苓桂朮甘湯上衝や動悸・めまいなど気の上逆が強い場合。
茵蔯五苓散五苓散に茵蔯を加え、胆汁うっ滞や黄疸を伴う場合。


⚠️ 使用上の注意

  • 口渇・便秘・のぼせのある熱証には不適。
  • 慢性的な腎不全や重度脱水時は慎重使用。
  • 体内の水分が不足している場合は悪化することがある。


📖 メモ(臨床的要点)

  • 「水の偏り」を正す代表方剤。
  • 水分を取っても体がうまくさばけない人に適す。
  • めまい・頭痛・吐き気・むくみを伴う「水滞」の第一選択。
  • 急性疾患(嘔吐・胃腸炎・二日酔い)にも、慢性疾患(メニエール・腎炎)にも応用可。

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