茵蔯蒿湯

📘 基本情報

項目内容
方剤名茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)
出典『傷寒論』
分類清熱利湿剤(せいねつりしつざい)
保険適用エキス製剤茵蔯蒿湯(ツムラ13、クラシエ13など)
構成生薬茵蔯蒿・山梔子・大黄


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能清熱利湿、退黄(ねつをさまし湿を除き、黄疸を解消する)
主治黄疸、口渇、尿不利、便秘、発熱など
病機湿熱が肝胆にこもり、胆汁の流れが阻害されて発熱・黄疸を生ずる
現代的適応肝機能障害、急性肝炎、胆嚢炎、胆石症、黄疸性疾患など


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体に熱感があり、顔色や目・皮膚が黄ばむ。尿が濃く少ない。便秘傾向。胸苦しさや口渇を伴う。
体質傾向実証・熱証・湿熱体質。
舌診舌質紅、苔黄膩。
脈診弦滑または数。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
茵蔯蒿(いんちんこう)清熱利湿、退黄の要薬。肝胆の湿熱を除く。
山梔子(さんしし)清熱瀉火、除煩。熱をさまし胆汁うっ滞を改善。
大黄(だいおう)瀉下、清熱、利胆。腸を通じて湿熱を排泄。


🩺 現代医学的な理解

  • 肝胆系の解毒促進・胆汁分泌促進作用
  • 抗炎症・抗酸化作用(肝細胞保護)
  • 胆汁うっ滞改善作用・血清ビリルビン低下作用
  • 便通促進により体内の代謝産物を排出


⚠️ 使用上の注意

  • 体力の弱い虚証の人には不向き。
  • 大黄を含むため、下痢傾向のある人は慎重に使用。
  • 熱証の黄疸に適し、寒湿性黄疸(冷えや倦怠感が強いタイプ)には不適。


💬 臨床応用例

  • 急性肝炎・胆嚢炎・胆石症による発熱・黄疸
  • 顔面や眼球の黄染、尿が濃い、便秘を伴う
  • 湿熱による皮膚の黄ばみ・痒み


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
茵蔯五苓散茵蔯蒿湯よりも水湿が強く、浮腫や尿量減少を伴う。
竜胆瀉肝湯肝胆の実火が強く、下焦(泌尿器・生殖器)の炎症傾向を伴う。
小柴胡湯肝胆の調和を重視し、寒熱往来などの少陽病証に適応。


📖 メモ

  • 「茵蔯蒿」は黄疸治療の要薬で、「退黄の聖薬」と呼ばれる。
  • 肝胆の湿熱が中心の病態に最適。
  • 黄疸・胆汁うっ滞性疾患に古くから広く応用される。

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