胃苓湯

東洋医学(漢方)の方剤まとめ — 胃腸の湿気・水滞を除く代表方剤

基本情報

方剤名 胃苓湯(いれいとう)
出典 《傷寒論》、または《金匱要略》派生
分類 利水滲湿剤 / 健脾利水剤
保険適用エキス製剤(例) ツムラ72・クラシエ72 等
構成生薬 猪苓、茯苓、蒼朮、白朮、桂枝、甘草、沢瀉、半夏、沢皮(製剤による差あり)

方意(効能・主治)

  • 効能:利水滲湿健脾和胃。胃腸の湿気や水滞を取り除く。
  • 主治:むくみ、胃部膨満感、嘔吐、下痢、水様便、飲食後の胃もたれ。
  • 病機:脾胃虚弱による水湿内停、胃腸の運化失調。
  • 現代的適応:慢性胃炎・胃もたれ・機能性胃腸症・浮腫・消化不良・胃部膨満感など。

臨床的特徴

使用目標(証) 胃腸が重く膨満し、水様便・むくみを伴う。冷えや湿気が悪化因子となる場合。
体質傾向 虚証・湿気が停滞しやすいタイプ。胃腸が弱く水湿に影響されやすい。
腹証・舌脈 胃脘部に膨満感や圧痛、舌苔は白・湿潤、脈は緩滑

構成生薬と主な作用

生薬名 主要作用
猪苓(ちょれい) 利水滲湿、排尿促進。水滞を除く。
茯苓(ぶくりょう) 健脾、利水。脾胃虚弱による水湿を除く。
蒼朮・白朮(そうじゅつ・びゃくじゅつ) 燥湿健脾。胃腸の湿邪を取り除く。
桂枝(けいし) 温経散寒。脾胃の運化を助ける。
甘草(かんぞう) 諸薬の調和、緩急止痛作用。胃腸の働きを整える。
沢瀉(たくしゃ) 利水滲湿。浮腫や水滞に有効。
半夏(はんげ) 燥湿化痰。嘔吐・胃もたれの改善。

現代医学的な理解

  • 消化管運動の改善
  • 胃腸内の水分バランス調整作用
  • 嘔気・胃部膨満感の軽減
  • 浮腫や胃腸の水滞による不快感改善

使用上の注意

  • 体に熱がこもり、水分が少なく便秘気味の場合には不適。
  • 甘草を含むため、長期大量使用では偽アルドステロン症に注意。
  • 妊婦・授乳中の使用や他薬との併用は医師・薬剤師に相談。

臨床応用例

  • 胃部膨満感、もたれ感、水様便・下痢を伴う消化不良。
  • むくみや浮腫を伴う胃腸不調。
  • 冷たい物を摂ると胃の重さが増すタイプ。

類方との鑑別

比較方剤 相違点
六君子湯 胃腸虚弱で食欲不振が中心。湿気より脾胃の虚弱に着目。
苓桂朮甘湯 水滞による胸悶・動悸が中心。胃腸症状より浮腫重視。
安中散 胃痛・冷えが主。湿気・水滞より寒邪中心の胃痛に使用。

メモ:「胃苓湯」は胃腸の水湿・浮腫を除く方剤。胃もたれや膨満感に適応。

(注)本稿は教育目的のまとめであり、診断・処方は医師・漢方専門医の判断に従ってください。

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