茵蔯五苓散

📘 基本情報

項目内容
方剤名茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)
出典『太平恵民和剤局方』
分類利湿退黄剤(りしつたいおうざい)
保険適用エキス製剤茵蔯五苓散(ツムラ114、クラシエ114など)
構成生薬茵蔯蒿・沢瀉・猪苓・白朮・茯苓・桂枝


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能利湿退黄、和胃化気(水湿を除き、胆汁の滞りを改善して黄疸を解消)
主治小便不利、黄疸、発熱、悪心、嘔吐、浮腫、口渇など
病機湿熱が中焦および肝胆にこもり、水液代謝が滞り、胆汁の流通障害を起こす。
現代的適応肝炎、胆石症、胆嚢炎、ネフローゼ、浮腫、尿量減少、黄疸性疾患など


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体が重だるく、顔色や目・皮膚が黄ばむ。尿量が少なく濃い。むくみや悪心、倦怠感を伴う。
体質傾向中間証〜やや実証。湿熱・水滞体質。
舌診舌質紅または淡紅、苔白膩または黄膩。
脈診滑または弦。


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
茵蔯蒿(いんちんこう)清熱利湿・退黄。肝胆の湿熱を除き黄疸を改善。
沢瀉(たくしゃ)利尿・清熱。余分な水分を排出。
猪苓(ちょれい)利尿・利湿。尿の通りをよくする。
白朮(びゃくじゅつ)健脾燥湿。脾の機能を助けて水湿の停滞を防ぐ。
茯苓(ぶくりょう)健脾利水。水分代謝を促進し、心神を安定させる。
桂枝(けいし)温経化気・助陽化水。水分代謝を円滑にする。


🩺 現代医学的な理解

  • 利尿作用・浮腫改善作用
  • 胆汁分泌促進・肝機能改善作用
  • 抗炎症・抗酸化作用
  • 体液循環改善による代謝促進


⚠️ 使用上の注意

  • 虚証や寒証(冷え・倦怠感が著明)には不向き。
  • 脱水傾向がある場合は慎重に使用。
  • 茵蔯蒿湯に比べて穏やかだが、利尿による体液バランスに注意。


💬 臨床応用例

  • むくみを伴う黄疸、尿量減少、浮腫
  • 湿熱による全身のだるさ、悪心、倦怠感
  • 慢性肝炎・胆石症・ネフローゼ症候群などで尿不利を伴う場合


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
茵蔯蒿湯発熱・口渇・便秘など熱が強い場合に用いる。茵蔯五苓散はより湿・水滞が主体。
五苓散茵蔯を除いた基本形。黄疸や胆汁うっ滞がない単純な水滞・浮腫に使用。
竜胆瀉肝湯下焦の湿熱(泌尿器・生殖器系の炎症)に用いる。


📖 メモ

  • 茵蔯蒿湯と五苓散を合わせた構成で、湿熱と水滞が並存する病態に最適。
  • 黄疸と浮腫を同時に改善する代表的方剤。
  • 急性から慢性まで、肝胆系・腎系双方に応用される。

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