睡眠不足とは

睡眠不足(すいみんぶそく)とは、睡眠時間や睡眠の質が不足し、心身の回復が十分に行われない状態を指す中医学的な病因・体質要因です。
中医学では「睡は陰に属し、醒は陽に属す」とされ、睡眠不足は陰血・心神・肝血・腎精を消耗し、全身の陰陽失調を招く重要な要因と考えられます。


主な原因

  • 過度の労働・夜更かし: 長時間労働や不規則な生活により、陰血が回復できない。
  • 精神的緊張・思慮過度: 心神が安定せず、入眠・熟睡が妨げられる。
  • 生活リズムの乱れ: 昼夜逆転や不規則な就寝時間。
  • 久病・体力低下: 正気不足により、睡眠での回復力が低下する。

病理機転

  • 睡眠不足により心血・心陰が消耗し、心神が安定しなくなる。
  • 肝血不足では魂が蔵されず、眠りが浅くなる。
  • 腎精が損なわれると、陰陽の根本が弱まり慢性疲労を招く。

主な症状

  • 疲労感、倦怠感が取れない
  • 集中力低下、健忘、判断力低下
  • 頭重感、眩暈、眼精疲労
  • イライラ、不安感、動悸
  • 長期では免疫低下、虚弱体質

舌・脈の所見

  • 舌: 淡紅〜紅、少苔(陰虚)
  • 脈: 細・虚・数

関連する証型


代表的な方剤

  • 酸棗仁湯 心肝血虚による不眠に。
  • 天王補心丹: 心腎陰虚・不眠動悸に。
  • 帰脾湯 心脾両虚・過労型不眠に。
  • 六味地黄丸: 腎陰虚を伴う慢性睡眠不足に。

治法

  • 養心安神 心神を養い、睡眠を安定させる。
  • 滋陰養血 消耗した陰血を補う。
  • 調和陰陽: 昼夜のリズムを整える。

養生の考え方

  • 夜更かしを避け、就寝時間を一定にする。
  • 就寝前のスマートフォン・強い刺激を控える。
  • 入浴や深呼吸で心身を緩める。
  • なつめ、百合根、竜眼肉など心血を養う食材を摂る。

まとめ

睡眠不足は、心神・陰血・腎精を慢性的に消耗させ、さまざまな虚証を引き起こす重要な生活要因です。
治療は養心安神滋陰養血・調和陰陽を基本とし、体質に応じた対応が必要です。
規則正しい生活と十分な休養が、根本的な回復の鍵となります。

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