概念
補血潤燥(ほけつじゅんそう)とは、血を補い、津液を増して燥を潤す治法である。 血虚や津液不足により、皮膚・粘膜・腸管などが乾燥し、 皮膚のかゆみ・便秘・口咽乾燥などの症状を呈する場合に用いられる。 特に、血虚が主で、それに伴って燥象が現れる場合に適応する。
所属
補益法のうちの補血法と、潤燥法の併用。
効能
- 補血養血:血虚を補い、皮膚や臓腑を滋養する。
- 潤燥生津:津液を生じさせ、乾燥を改善する。
- 和栄調営:血と津液の調和を図り、生理機能を回復する。
主治
- 血虚燥熱による皮膚乾燥・瘙痒・落屑
- 陰血不足による咽喉乾燥・咳嗽・便秘
- 血虚性便秘(老人性・産後・慢性病後など)
- 月経量少・月経遅延・顔色萎黄
- 慢性湿疹後の皮膚乾燥・掻痒感
病機解説
血は全身を滋養し、津液は潤いを保つ。 血虚になると皮膚・筋肉・腸管などへの栄養が不足し、津液の生成も減少する。 その結果、乾燥・掻痒・便秘・咽乾などの「燥」の症候が現れる。 治療では血を補って生津し、同時に潤燥薬を併用して潤いを回復させる。
代表方剤
- 四物湯(しもつとう):基本の補血方。血虚による皮膚乾燥・月経不調などに。
- 潤腸丸(じゅんちょうがん):血虚腸燥による便秘。補血と潤腸を兼ねる。
- 当帰飲子(とうきいんし):血虚風燥による皮膚瘙痒・乾燥に用いる。
- 養血潤膚湯(ようけつじゅんぷとう):血虚燥熱による皮膚疾患に応用。
- 麻子仁丸(ましにんがん):血虚・津液不足の便秘に広く用いられる。
応用
- 老人性乾燥肌・掻痒症
- 慢性便秘・産後便秘・貧血性便秘
- 乾燥性咳嗽・咽喉不快感
- 血虚を伴う慢性皮膚炎・湿疹・乾癬
- 更年期にみられる皮膚乾燥や便秘
使用上の注意
- 湿や痰が多い場合は、過度な滋潤で脾胃を損なわないよう注意する。
- 実熱が明らかな場合は、清熱薬を配合する。
- 血虚が著しい場合は補血薬を主とし、潤燥薬を配合する。
まとめ
補血潤燥法は、血を補い、津液を増して乾燥を潤す治法である。 皮膚や腸の乾燥、血虚による便秘・瘙痒・咽乾などに有効。 代表方剤は四物湯・潤腸丸・当帰飲子などで、 「養血と潤燥を併施」することが臨床の要点である。
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