四物湯(しもつとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名四物湯(しもつとう)
出典《太平恵民和剤局方》
分類補血調血剤(養血調経方)
構成生薬 当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)・川芎(せんきゅう)・地黄(じおう)
方名の由来 4つの生薬から構成されることに由来し、「血を養い、血の流れを整える」ことを目的とする。


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能養血調血(血を補い、血行を調える)。
主治 血虚による顔色不良・めまい・動悸・月経不順・月経痛・不妊・産後の衰弱など。
また、皮膚の乾燥・しびれ・爪の異常など「血の不足」に伴う諸症。
病機 血虚により、全身への栄養が行き届かず、血行も滞る。
そのため、顔色が悪く、皮膚・筋肉・臓腑の働きが低下する。


💊 構成生薬と作用

生薬主な作用
当帰(とうき)補血活血。血を補いながら血流を促進し、月経を整える。
芍薬(しゃくやく)養血柔肝。肝血を養い、筋肉の緊張やけいれんを緩和。
川芎(せんきゅう)行気活血。血行を促進し、頭痛や瘀血を除く。
地黄(じおう)滋陰補血。血を生じさせ、体を潤す。


🌸 組み合わせの妙(方意の構造)

  • 当帰:血を「補う」と同時に「流す」中心薬。
  • 芍薬+地黄:血を「滋養」して体を潤す。
  • 川芎:血の流れを活性化し、瘀血を防ぐ。
  • →「補う」だけでなく「巡らせる」ことにより、血の生化と流通の両方を整える。


🌡 臨床的特徴

観点内容
症状の特徴 顔色が白い・艶がない・唇の血色が悪い・めまい・動悸・不眠。
月経量が少ない、または遅れがち。月経痛、冷え、不妊傾向も。
体質傾向 虚弱体質で冷えやすく、疲れやすい。肌や髪の乾燥傾向がある。
脈証・舌象 脈:細または弱。
舌:淡紅で苔少ない(血虚の所見)。


🩺 現代医学的応用

  • 貧血傾向・更年期障害・冷え性・月経不順・月経痛。
  • 不妊症・産後回復・皮膚の乾燥・血行障害。
  • 慢性頭痛・肩こり・倦怠感などにも応用。
  • 四物湯を基礎とした派生方(加味逍遙散・温清飲など)が多数存在。


⚖️ 類方・比較

方剤特徴・鑑別点
当帰芍薬散血虚に「水滞」を伴う場合。むくみや冷えが強い。
加味逍遙散血虚に「気鬱・熱」を伴う場合。のぼせやイライラが強い。
温清飲血虚に「血熱・瘀血」を伴う場合。皮膚疾患・月経不順に応用。
十全大補湯四物湯+四君子湯で気血両虚を補う。


⚠️ 使用上の注意

  • 冷えが非常に強い場合は温経湯・当帰四逆湯などを選ぶ。
  • 瘀血が強く停滞する場合は桃紅四物湯などを検討。
  • 胃腸虚弱で湿が多い場合は加減を要する。


📖 メモ(臨床要点)

  • 「血虚証」の基本処方として、女性の体調不良に広く応用。
  • 四物湯=“血のビタミン剤”とも呼ばれる。
  • 多くの方剤(温清飲・加味逍遙散・帰脾湯など)の基礎方。
  • 当帰・芍薬・川芎・地黄の調和が、補血と活血のバランスを取る。
  • 「血を補い、血を巡らせる」—これが四物湯の核心。

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