痰滞気阻とは

痰滞気阻とは、体内に生じた痰濁が気の運行を阻害し、気機の停滞を引き起こした状態を指す中医学の病証です。
気は本来、上下左右に円滑に巡ることで臓腑機能を支えますが、痰が停滞すると気の通路が塞がれ、胸悶・脹満・咽喉異物感などの症状が現れます。
とくに脾・肺・肝との関係が深い病証です。

主な原因

• 脾虚生痰： 脾の運化失調により湿が聚まり痰となる。
• 情志鬱結： 肝気鬱滞が痰と結び、気機を阻滞する。
• 飲食不節： 脂っこい食事・甘味の過多により痰濁が内生する。
• 肺失宣降： 痰が上焦に停滞し、気の昇降が乱れる。

病理機転

• 脾虚 → 痰湿内生 → 気の通路を阻害。
• 痰が気機に絡む → 気滞がさらに悪化。
• 痰気互結 → 胸脇・咽喉・腹部に閉塞感。

主な症状

• 胸悶・胸苦しさ・息苦しさ
• 咽喉部の異物感（梅核気）
• 脘腹脹満、げっぷ・悪心
• 痰が多く切れにくい
• 気分の抑鬱、不安感
• 症状は情緒変動で増悪しやすい

舌・脈の所見

• 舌： 淡～やや胖、苔白膩または厚膩
• 脈： 滑、弦滑

証型別の鑑別

• 痰気互結： 咽喉異物感が顕著、情志因子が強い。
• 痰湿阻滞： 身体の重だるさ、頭重感を伴う。
• 気滞血瘀： 疼痛が固定的で刺すような痛み。

治法

• 理気化痰： 気の巡りを整え、痰を除く。
• 疏肝解鬱： 情志による気滞を改善する。
• 健脾燥湿： 痰の生成を防ぐ。

養生の考え方

• 脂っこい食事・甘味・冷飲を控える。
• 深呼吸や軽い運動で気の巡りを促す。
• ストレスを溜め込まず、情緒を安定させる。
• 陳皮、紫蘇、生姜、茯苓など理気化痰食材を活用。

まとめ

痰滞気阻は、痰濁が気機の運行を妨げ、胸悶・咽喉異物感・脹満感などを引き起こす病証です。
治療では理気化痰・疏肝解鬱を基本とし、痰と気の双方に同時に対応することが重要です。
生活面では飲食の節制と情志調整が回復の鍵となります。