久病脾虚とは

久病脾虚とは、慢性疾患や長期にわたる体調不良によって脾の運化機能が次第に損なわれた病証です。
脾は「後天の本」「気血生化の源」とされ、久病による消耗はまず脾を傷り、全身の虚弱や回復力低下を招きます。
本証は慢性・虚証を基調とし、他の虚証（気虚・血虚・湿困）を併発しやすい点が特徴です。

主な原因

• 慢性疾患・長期療養： 病邪の消耗や治療負担により脾気が損傷。
• 久病体虚： 長期の体力低下で運化機能が衰える。
• 飲食不節： 食欲不振や栄養不足が脾虚を助長。
• 思慮過度： 精神的負担が持続し脾を損傷。

病理機転

• 久病により脾気が消耗し、運化・昇清機能が低下。
• 気血生化が不足し、全身の滋養が行き届かなくなる。
• 脾虚が進行すると湿が内生し、さらに脾を困らせる。

主な症状

• 食欲不振、食後の疲労感
• 腹部膨満感、胃もたれ
• 倦怠感、無力感、疲れやすい
• 大便溏薄または下痢しやすい
• 顔色萎黄、体重減少
• 回復が遅く、再発しやすい

舌・脈の所見

• 舌： 淡、胖、苔薄白または白膩
• 脈： 緩・虚・弱

証型別の鑑別

• 脾気虚： 発症は比較的急で、慢性経過が目立たない。
• 脾陽虚： 冷えや腹痛、温めると軽快する症状が強い。
• 脾虚湿困： 重だるさや舌苔白膩が顕著。
• 久病虚労： 脾以外の臓腑虚証も顕著。

治法

• 健脾益気： 脾気を補い運化を回復。
• 扶正培本： 正気を助け体力を養う。
• 佐以化湿： 湿の停滞を防ぎ脾の回復を助ける。

養生の考え方

• 無理をせず、十分な休養を確保する。
• 消化の良い温かい食事を少量ずつ摂る。
• 冷飲・生もの・脂っこい食事を避ける。
• 規則正しい生活で脾胃を養う。

まとめ

久病脾虚は、慢性疾患の経過中に脾の運化機能が徐々に衰えた虚証です。
治療は健脾益気・扶正培本を基本とし、急がず段階的に体力を回復させることが重要です。
食養生と休養を重視した生活管理が、回復の土台となります。