肝陽亢進とは

肝陽亢進とは、肝陰や腎陰の不足によって肝陽が相対的に過剰となり、頭部や上半身に陽気が激しく上昇する病証です。
主に情志の失調加齢・久病による陰虚を背景として発生し、上実下虚の病態を呈します。
肝は「昇発」を主るため、抑制すべき陰が不足すると、陽が制御されず亢進します。


主な原因

  • 肝陰不足 情志過多・久病・過労により肝陰が消耗。
  • 腎陰虚 腎水が不足し、肝木を滋養できない。
  • 情志刺激: 怒り・抑うつ・緊張が長期化。
  • 加齢: 陰液の自然消耗による陽亢。

病理機転

  • 肝陰・腎陰の不足により、陽を制御できなくなる。
  • 肝陽が上逆し、頭部・清竅を攪乱。
  • 気血が上衝し、上半身に実証を呈する。

主な症状

  • 頭痛、頭重、めまい
  • 顔面紅潮、目の充血
  • 耳鳴り(高音性)
  • 易怒、焦燥感、不眠
  • 口苦、咽乾
  • 下肢のだるさや腰膝酸軟(下虚)

舌・脈の所見

  • 舌: 紅、苔少または薄黄
  • 脈: 弦数、弦有力

証型別の鑑別

  • 肝火上炎 肝陽亢進より実熱が強く、激しい頭痛・口渇・便秘。
  • 肝腎陰虚 腰膝酸軟、盗汗、五心煩熱を伴う。
  • 痰火上擾 めまいに痰多・胸悶を伴う。
  • 血虚陽亢: 動悸、顔色蒼白を伴う。

治法

  • 平肝潜陽 亢進した肝陽を鎮める。
  • 滋陰補腎: 肝腎陰を補い、陽を制御。
  • 清肝瀉熱: 余剰の熱を除く。

養生の考え方

  • 怒りや強い感情の起伏を避ける。
  • 夜更かしを控え、十分な睡眠をとる。
  • 刺激物・飲酒・辛熱食品を控える。
  • 黒胡麻、百合根、枸杞子など滋陰食材を摂る。

まとめ

肝陽亢進は、肝腎陰虚を基盤とした上実下虚の病証であり、頭部症状と情志異常を主とします。
治療では平肝潜陽・滋陰補腎を基本とし、単なる瀉法に偏らないことが重要です。
生活養生では情志の安定と休養が改善の鍵となります。

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