膀胱湿寒とは

膀胱湿寒(ぼうこうしつかん) とは、外感の寒湿や内因的な陽気不足により湿と寒の邪が膀胱に停滞し、膀胱の気化作用を妨げて排尿異常を引き起こす病態です。
寒邪は収引・凝滞の性質をもち、湿邪は粘滞・重濁の性質を持つため、尿の出にくさや冷感を伴うのが特徴です。


原因

  • 外感寒湿: 雨や雪に濡れる、冷たい環境に長時間いるなどにより寒湿が侵入する。
  • 飲食不摂: 冷たい飲食物の過剰摂取により寒湿が生じ、膀胱に滞る。
  • 腎陽不足: 体内の温煦作用が低下し、寒湿を祓えず膀胱に留まる。

主な症状

  • 排尿困難、尿の出が悪い
  • 尿が清長で量が少ない、あるいは滴下性
  • 尿意があってもスムーズに出ない
  • 下腹部の冷感や重だるさ
  • 全身の冷え、特に腰や下半身の冷え
  • 浮腫(寒湿が停滞した場合)

舌・脈の所見

  • 舌: 淡胖、苔白膩
  • 脈: 沈遅または濡

代表的な方剤

  • 真武湯(しんぶとう): 腎陽虚を伴う寒湿の停滞による浮腫・排尿障害に用いる。
  • 五苓散(ごれいさん): 水湿の滞りによる小便不利に適する。
  • 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう): 寒湿によるめまいや排尿異常に用いられることがある。

養生の考え方

  • 冷えを避け、腰腹部を温める
  • 冷たい飲食(氷水・生もの・冷たい酒類)を控える
  • 温補・利水作用のある食材(生姜、ねぎ、はと麦、黒豆など)を取り入れる
  • 軽い運動や入浴で陽気を巡らせる

まとめ

膀胱湿寒とは、寒湿の邪が膀胱に滞り、気化作用を妨げることで排尿困難・清長尿・下腹部の冷感などを引き起こす病態です。
治療・養生の基本は「温陽化湿」「利水通淋」であり、生活上では冷えを避けて体を温めることが大切です。

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