気随血脱(きずいけつだつ) とは、大量の出血に際し、血とともに気も急速に失われていく危急証を指します。
通常、気は血を統摂し、血の循行を推動する働きがありますが、出血が甚だしい場合、気は血とともに虚脱し、全身の機能維持が困難となります。臨床的には出血性ショックに相当する病態です。
原因
- 外傷・手術・産後などによる大出血: 急激な血の喪失により気が脱する。
- 吐血・下血・崩漏: 内因性の大量出血による。
主な症状
- 顔面蒼白、四肢冷え、冷汗
- 精神萎靡、目眩、意識朦朧あるいは昏厥
- 脈は微細・欲絶
- 出血は鮮紅色または暗赤色で持続的に流出
舌・脈の所見
- 舌: 淡白または光沢を失う
- 脈: 微細欲絶
治療方針
- 固脱回陽・益気固脱・止血: 気の虚脱を防ぎつつ、出血を止める。
代表的な方剤
- 独参湯(どくじんとう): 元気大虚のときに人参を大量に用いる。
- 参附湯(じんぶとう): 大量出血後の虚脱に、人参・附子で回陽救逆。
- 四生丸(しせいがん): 崩漏など出血に対する止血。
養生・注意点
- 緊急処置が第一であり、西洋医学的な止血・輸血などと併用する。
- 回復期には益気養血の治療を行い、体力を補う。
まとめ
気随血脱は、大量出血によって気もともに失われる危急証であり、直ちに気を回復させ止血することが生命維持の要となります。
中医学では「固脱回陽」と「益気止血」を要旨とし、緊急救命処置と併用することが重要です。
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