下焦虚寒とは

下焦虚寒（かしょうきょかん） とは、下焦（腎・膀胱・大腸・生殖器）の陽気が虚して温煦・推動作用が弱まり、寒が内生して水液代謝や排泄機能が障害される病態です。
そのため、排尿困難・小便清長、下痢や帯下、腰膝の冷えなどが現れやすくなります。

原因

• 腎陽不足： 先天的虚弱や加齢、慢性病によって腎陽が衰える。
• 久病による損傷： 慢性疾患により脾腎陽気が損なわれ、寒が内生する。
• 過労・房事過多： 腎精と腎陽を損傷し、下焦の機能低下を招く。
• 寒湿の長期停滞： 外感寒湿や冷飲食の常用により寒湿が留まり、陽気を損なう。

主な症状

• 小便清長または尿量減少、尿失禁
• 排尿困難、頻尿、夜間多尿
• 下痢または夜明け頃の五更泄瀉
• 下腹部の冷えと重だるさ
• 帯下が淡白で量が多い
• 腰膝の冷えやだるさ、四肢厥冷
• 性機能低下、不妊

舌・脈の所見

• 舌： 淡胖、苔は白滑
• 脈： 沈遅または弱

代表的な方剤

• 金匱腎気丸（きんきじんきがん）： 腎陽虚による排尿障害や腰膝冷痛に用いる。
• 真武湯（しんぶとう）： 脾腎陽虚により寒湿が停滞し、下痢・浮腫を伴う場合に適する。
• 参附湯（じんぶとう）： 陽気大虚による四肢厥冷や排泄機能低下に用いる。

養生の考え方

• 冷飲食や生ものを避け、温かい食事を心がける
• 腰腹部を冷やさないよう保温する
• 過労・房事過多を避け、腎精を守る
• 温陽補腎の食材（羊肉、くるみ、生姜、にらなど）を取り入れる

まとめ

下焦虚寒とは、腎や下焦の陽気不足によって寒が内生し、排尿障害・下痢・帯下・腰膝冷痛などを引き起こす病態です。
治療・養生の基本は「温補腎陽」「健脾利水」であり、体を温め、腎陽を養う生活習慣が重要です。