胃陰虚火旺(いいんきょかおう) とは、胃の陰液が長期の消耗や虚損により不足し、陰陽のバランスが崩れて虚火が内に亢進した状態を指します。
陰液は潤いと冷却の役割を持ちますが、それが不足すると「虚熱」が生じ、口乾や咽喉の灼熱感、胃痛の灼熱感、出血傾向などの症状をもたらします。
原因
- 慢性病後や加齢: 長引く病気や高齢によって胃陰が損耗する。
- 飲食の不摂生: 辛辣・熱性の飲食や暴飲暴食により胃陰を傷る。
- 情志の失調: 過度の思慮・心配により脾胃を損傷し、陰液の消耗を加速させる。
- 熱病の後期: 高熱が続いた後、津液が消耗して胃陰虚から虚火が生じる。
主な症状
- 口乾・咽喉の灼熱感
- 食欲不振または少量で胃の不快感
- 胃痛(灼熱感を伴い、空腹時に悪化することが多い)
- 大便乾燥、便秘傾向
- 口臭
- 歯肉の腫脹や出血、吐血・鼻出血の傾向
- 煩熱・盗汗・不眠などの虚熱症状
舌・脈の所見
- 舌: 舌質は紅、苔少または無苔
- 脈: 細数
代表的な方剤
- 玉女煎(ぎょくじょせん): 胃陰虚により虚火が亢盛し、歯痛・口乾・胃熱感を呈する場合に用いる。
- 清胃散(せいいさん): 胃に火が盛んで歯齦の腫脹・出血があるときに用いる。
- 麦門冬湯(ばくもんどうとう): 胃陰虚により口渇・咽乾を訴える場合に適応する。
養生の考え方
- 辛辣・油っこい・熱性の食べ物を避ける
- 潤いを補う食材(梨、百合根、山薬、蜂蜜など)を取り入れる
- 暴飲暴食や夜更かしを避け、陰液を養う生活を心がける
- 精神的な安定を保ち、過度の思慮を避ける
まとめ
胃陰虚火旺とは、胃の陰液不足により虚火が内に亢進して、口乾・胃痛の灼熱感・出血傾向などを呈する病態です。
治療・養生の基本は「滋陰降火」「養胃生津」であり、生活習慣の改善と陰液を養う食材の摂取が重要です。
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