概要
解表透疹（げひょうとうしん）とは、 表邪を発散して疹を透達させ、発疹を順調に出すことで病邪を外に解く治法である。 「解表」は風寒や風熱などの表邪を除くこと、 「透疹」は麻疹・風疹などの発疹性疾患において、疹がよく出るようにして邪を外へ出すことを意味する。 主として麻疹・風疹・水痘などの発疹性外感病に用いられる。
中医学では、疹が「順調に出る」ことが治癒の要点とされる。 疹が表に出られず「隠疹」となると、熱が内にこもって発熱・咳嗽・昏睡・痙攣などを起こす。 したがって、解表透疹法は初期における風熱外邪の発疹を助け、邪を表から解く治法である。
主な適応症状
- 麻疹・風疹・水痘などの発疹性疾患
- 発熱・悪風・頭痛・咳嗽・咽痛
- 疹点が遅れて出る・出にくい・色が淡い
- 疹出不暢・隠疹・発疹停滞
- 舌紅・苔薄白または薄黄、脈浮数
これらは、風熱邪気が表に鬱滞し、疹毒が透発しにくくなった状態を示す。
主な病機
- 風熱外襲 → 衛気不和 → 疹毒外達せず。
- 邪熱内盛 → 気分に入る → 発疹不暢または隠疹。
- 表邪未解 → 疹出停滞 → 熱鬱裏化。
したがって、解表透疹法は風熱を疏散し、邪気を外へ導いて疹を速やかに出すことを目的とする。 疹が順調に出れば、熱も自然に解け、病勢は軽減する。
主な配合法
- 解表透疹＋清熱解毒：風熱が強く、熱毒による咽痛・発熱を伴う（例：銀翹散・升麻葛根湯）。
- 解表透疹＋涼血：熱盛により発疹が暗紅・高熱を伴う（例：清瘟敗毒飲）。
- 解表透疹＋宣肺：咳嗽・鼻塞・喉痛を伴う（例：麻黄連翹赤小豆湯）。
- 解表透疹＋養陰：疹後口渇・咽乾・津液損傷を伴う（例：沙参麦門冬湯）。
- 解表透疹＋利咽：風熱による咽痛や腫脹を伴う場合（例：銀翹散合牛蒡子湯）。
代表的な方剤
- 升麻葛根湯（しょうまかっこんとう）：解肌透疹・発表清熱。麻疹初期で疹が出にくい場合に。
- 銀翹散（ぎんぎょうさん）：疏風清熱・解毒透疹。風熱表証や咽痛を伴う発疹性疾患に。
- 麻黄連翹赤小豆湯（まおうれんぎょうせきしょうずとう）：解表宣肺・透疹解毒。麻疹・風疹・皮疹に応用。
- 清瘟敗毒飲（せいうんはいどくいん）：清熱解毒・涼血透疹。高熱・暗紅疹を伴う重症例に。
- 竹葉石膏湯（ちくようせっこうとう）：清熱養陰・透疹止渇。疹後の熱残りや口渇に。
臨床でのポイント
- 発疹が出にくく、熱が下がらないときに解表透疹法を用いる。
- 疹出が完全に済んだ後は、透疹薬を中止し、養陰・清熱に転じる。
- 疹が完全に出る前に発汗を過度に促すと、邪が内に閉じこもるため注意。
- 熱毒が強い場合は、清熱解毒・涼血薬を併用する。
- 津液損傷の徴がある場合は、養陰薬を適宜加える。
まとめ
解表透疹法は、表邪を解き、疹を透達させて発疹を順調に出す治法である。 主として麻疹・風疹・水痘などの発疹性疾患に用いられ、 代表方剤は升麻葛根湯・銀翹散・麻黄連翹赤小豆湯など。 風熱を疏散し、疹毒を外に導くことで、発熱・咳嗽・咽痛などの表証を鎮め、 病邪を外解して回復を促すのが本法の要点である。
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