概要
涼血(りょうけつ)は、血分に入った熱邪を清し、血の運行を正常化して血分の安寧を回復させる治法である。 血分の熱は「営血・血熱」とも呼ばれ、熱邪が血脈に侵入して血行を乱し、出血・発斑・煩躁・神昏などを引き起こす。 涼血法は主に清熱・涼血・解毒・安神を兼ねて用い、熱盛・血熱妄行・熱入営血証などに応用される。
主な適応症状
- 発熱・夜熱早涼・身熱甚だしく
- 斑疹・皮下出血・吐血・衄血・尿血・便血・崩漏などの出血症状
- 心煩・不眠・譫語・神昏・舌絳
- 脈数・細・または弦数
主な病機
- 熱邪入営:熱邪が気分を越えて営分に侵入し、血行を乱す。
- 血熱妄行:熱盛が血絡を損傷し、血が脈外に溢出。
- 温病後期:熱が陰液を損傷し、血分にこもって内熱を形成。
- 熱毒発斑:疫毒熱盛が血絡に影響し、皮膚に出血・紅斑を生ず。
治療原則
- 血分の熱を清し、営血を安定させる。
- 熱盛には清熱解毒、血妄には涼血止血を兼ねる。
- 熱傷陰には養陰・安神を併用する。
- 熱極動風や神昏には清営・開竅を加える。
- 血分の熱を冷ますが、陰液を損なわないよう注意する。
主な配合法
- 涼血+解毒:熱毒入血による発斑・瘡瘍(例:犀角地黄湯、清瘟敗毒飲)。
- 涼血+止血:血熱妄行による出血(例:十灰散、凉血地黄湯)。
- 涼血+養陰:陰虚血熱・温病後期(例:清営湯、玉女煎)。
- 涼血+安神:血熱擾心による不眠・煩躁(例:黄連阿膠湯)。
- 涼血+化瘀:血熱瘀阻による経閉・崩漏(例:桃紅四物湯加減)。
代表的な方剤
- 犀角地黄湯(さいかくじおうとう):熱入営血、発斑・出血・神昏に。
- 清営湯(せいえいとう):熱入営分、身熱夜甚・煩躁不眠に。
- 凉血地黄湯(りょうけつじおうとう):血熱妄行による出血に。
- 黄連阿膠湯(おうれんあきょうとう):陰虚火旺・心煩不眠に。
- 清瘟敗毒飲(せいおんはいどくいん):熱毒壅盛・斑疹・高熱に。
臨床でのポイント
- 涼血法は主に血熱による出血・皮疹・発熱・煩躁に用いる。
- 営血・血分の熱には「清熱解毒」よりも深い層への作用が必要。
- 出血が鮮紅で、熱象を伴う場合に最も適する。
- 陰液の損傷を防ぐため、涼血薬は養陰薬と併用することが多い。
- 熱毒・疫病・温病など、発熱性疾患の中期~後期にも応用される。
まとめ
涼血は、血分にこもる熱を冷まし、営血を安定させる清熱治法である。 主に血熱妄行・熱入営血・発斑出血などに用いられ、 清熱・解毒・止血・養陰・安神の各法と併用されることが多い。 代表方剤は犀角地黄湯・清営湯・凉血地黄湯である。
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