升麻葛根湯(しょうまかっこんとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名升麻葛根湯(しょうまかっこんとう)
出典《小児薬証直訣》
分類解表透疹剤発汗解肌透疹解毒
構成生薬 升麻(しょうま)・葛根(かっこん)・芍薬(しゃくやく)・甘草(かんぞう)
方名の由来 主薬である升麻と葛根を中心とすることから命名。
これらはともに「肌表を解き、発疹を透出させる」作用を持つ。


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能発汗解肌透疹解毒
主治 麻疹初期、発疹が順調に現れず、悪寒発熱・頭痛・身痛・目赤・咽喉痛などを伴うもの。
または、発疹が遅れて出にくい・透発が不良な場合にも用いられる。
病機 風熱が肌表に閉じ込められ、衛気の疏達が阻まれ、発疹がうまく現れない状態。
表を解き、疹を透出させ、熱毒を外へ散らすことが治法となる。


💊 構成生薬と作用

生薬主な作用
升麻発表透疹・清熱解毒。発疹を促し、皮膚表面に熱毒を発散させる。
葛根解肌透疹・発汗解表。筋肉の拘急を緩め、表熱を除く。
芍薬養血和営・緩急止痛。発疹時の疼痛やひきつりを和らげる。
甘草調和諸薬・解毒。全体の作用を整え、咽喉痛を和らげる。


🌡 臨床的特徴

観点内容
症状の特徴 発熱・悪寒・頭痛・咽喉痛・目赤・身痛を伴い、
麻疹や発疹が出にくい、または不完全な状態。
皮疹が淡く、発汗が少ないことが多い。
体質傾向 表熱があり、体表の気機が閉じ、発汗や発疹が阻まれている状態。
衛気鬱滞の傾向。
脈証・舌象 脈:浮数。
舌:紅、苔は薄黄または薄白。


🩺 現代医学的応用

  • 麻疹(はしか)初期。
  • 発疹が出にくい麻疹・風疹・猩紅熱。
  • 水痘の発疹初期。
  • ウイルス性発熱の初期。
  • 皮疹が遅れて出る発熱性疾患。


⚖️ 類方・比較

方剤特徴・鑑別点
葛根湯発汗解肌の力が強く、発疹よりも筋肉痛や項背強直に重点。
銀翹散発熱・咽喉痛が強く、発疹よりも風熱邪の清解を重視。
麻黄湯悪寒・無汗・表実証で、発疹よりも強い表寒邪に対応。
升麻鱉甲湯発疹が出ても引かない、または発熱が続く時に用いる。


⚠️ 使用上の注意

  • 発疹がすでに十分に出ている場合は用いない。
  • 体力虚弱・汗出過多の者には慎用。
  • 発疹が出きった後は、清熱解毒・養陰の方剤に切り替える。


📖 メモ(臨床要点)

  • 「発疹を出す」ための方剤であり、出しすぎを防ぐため注意が必要。
  • 麻疹初期の「発疹が出にくい」「表邪がこもる」状態に用いる。
  • 升麻と葛根が発疹を助け、芍薬・甘草が血分と営分を守る構成。
  • 小児の発疹性疾患初期にも広く応用される。

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