外感風寒とは

外感風寒（がいかんふうかん）とは、風邪（ふうじゃ）と寒邪（かんじゃ）が外から体表に侵入し、肺や経絡の気の流れを阻害することで発症する急性の外感性疾患を指します。
東洋医学では、風寒は「外感六淫（風・寒・暑・湿・燥・火）」のうち最も一般的な発病因子であり、特に冬季や寒冷・風の強い環境で体表の防衛機能（衛気）が弱まると侵入しやすくなります。

原因

• 寒冷や風邪の侵入： 気温低下・強風・濡れた衣服などによって寒邪が体表から侵入する。
• 衛気虚弱： 体表を守る衛気が不足し、風寒に対する抵抗力が低下する。
• 不適切な衣服・冷気曝露： 冷風やエアコンの直当たりなどによる体表の冷却。
• 睡眠不足・過労： 気血の不足により体表の防衛機能が弱まる。

主な症状

• 悪寒・発熱（悪寒が主）
• 頭痛・項背部の強張り
• 無汗または軽度の発汗
• 鼻閉・清涕（うすい鼻水）
• 咳嗽・痰は白く希薄
• 全身倦怠・関節痛・脈浮緊

舌・脈の所見

• 舌： 淡紅、苔薄白
• 脈： 浮緊

病理機転

• 風寒邪が体表に侵入すると、衛気の運行が阻害され、肌表の開闔が失調する。
• 衛陽が束縛されるため、発汗が障害され、悪寒・頭痛・項背部の強張りが現れる。
• 肺気の宣発粛降が乱れることで、咳嗽・鼻閉・清涕が生じる。
• 寒邪が重い場合は発汗が見られず、悪寒が強く、熱感は軽微となる。

代表的な方剤

• 麻黄湯（まおうとう）： 無汗・悪寒・頭痛・関節痛を伴う風寒表実証に。
• 桂枝湯（けいしとう）： 発汗あり・悪風・脈浮緩などの風寒表虚証に。
• 小青竜湯（しょうせいりゅうとう）： 風寒と水湿の停滞による咳嗽・痰多・鼻水に。
• 香蘇散（こうそさん）： 体質虚弱で気鬱を伴う軽い風寒感冒に。

治法

• 発汗解表： 発汗によって風寒邪を体表から排出する。
• 宣肺散寒： 肺気を宣通させ、寒邪による閉塞を解除する。
• 調和営衛： 表虚による発汗不調の場合、営気と衛気を調える。

養生の考え方

• 冷風・寒気への曝露を避け、衣服で保温する。
• 発汗後は速やかに着替え、体を冷やさない。
• 温かい飲食（生姜湯・葱湯など）で体を温める。
• 入浴や足湯で血行を促進し、寒邪の滞りを防ぐ。
• 十分な休養と睡眠をとり、衛気の回復を図る。

まとめ

外感風寒とは、風邪と寒邪が体表から侵入して衛気を阻害し、悪寒・頭痛・無汗・鼻閉・咳嗽などを呈する状態です。
治療の基本は発汗解表・宣肺散寒であり、代表方剤として麻黄湯・桂枝湯・小青竜湯・香蘇散などが用いられます。
体を温めて衛気を守り、風寒邪の排除とともに体表の調和を回復することが要点です。