📘 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方剤名 | 香蘇散(こうそさん) |
| 出典 | 『太平恵民和剤局方』 |
| 分類 | 理気解表剤(気鬱を伴う感冒の基本方) |
| 構成生薬 | 香附子・蘇葉・陳皮・甘草 |
| 保険適用エキス製剤 | 香蘇散(ツムラ55、クラシエ55など) |
🧭 方意(効能と主治)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 解表理気、調中和胃。 |
| 主治 | 気鬱を伴う感冒、または胃腸虚弱による悪寒発熱・頭痛・胸脇のつかえ・食欲不振。 特に女性や神経質な人の風邪やストレス性不調に適す。 |
| 病機 |
外感風寒により衛気が阻滞し、さらに肝気鬱結が加わり、気の流れが滞って発熱・悪寒・胸脇満・食欲低下を呈する。 表邪と内鬱(気滞)を同時に解く方剤。 |
🌡 臨床的特徴
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 典型的症状 |
・軽い悪寒発熱、頭重、無汗 ・胸や脇のつかえ、腹満感 ・食欲不振、げっぷ、胃の張り ・気分の落ち込み、ストレス反応 ・風邪を引くとすぐ胃がもたれる、など |
| 体質傾向 | 神経質・情緒不安定・胃腸虚弱タイプ。女性に多い。 |
| 舌診 | 淡紅、薄白苔。 |
| 脈診 | 弦または緩。 |
💊 構成生薬と作用
| 生薬 | 主要作用 |
|---|---|
| 香附子(こうぶし) | 理気解鬱、調経止痛。肝気鬱滞を解消。 |
| 蘇葉(そよう) | 発表散寒、理気和胃。風寒を散らしつつ胃の働きを整える。 |
| 陳皮 | 理気健脾、燥湿化痰。気滞を除き消化を助ける。 |
| 甘草 | 補中和中、調和諸薬。胃腸を保護する。 |
🩺 現代医学的な理解
- 自律神経性の風邪:感冒初期で悪寒や倦怠が強く、ストレスや緊張の影響を受けるタイプに有効。
- 神経性胃腸症:ストレスや精神的要因で胃の張りや食欲不振が起こる場合。
- PMS・更年期不定愁訴:気鬱・抑うつ・不安などを伴う軽度の自律神経失調症状に。
💬 臨床応用例
- 風寒感冒で気分がふさいでいる。
- ストレス・緊張で胃が張る、食欲が落ちる。
- 季節の変わり目に体調を崩しやすい。
- 風邪をひくとすぐ胃腸症状が出るタイプ。
- 軽い自律神経失調、抑うつ、PMS。
⚖️ 類方鑑別
| 方剤名 | 鑑別点 |
|---|---|
| 香蘇散 | 気鬱と表寒を同時に治す。軽い感冒・胃腸不快を伴う。 |
| 蘇葉黄耆湯 | 感冒を繰り返す虚弱体質の風邪に。 |
| 加味逍遙散 | 気鬱・抑うつが中心で、感冒症状はない場合。 |
| 半夏厚朴湯 | 咽中塞塞感(喉のつかえ)や不安感が主体。 |
⚠️ 使用上の注意
- 実証で熱が強い、喉が痛い風邪には不向き。
- 胃腸の弱い人には有効だが、過剰投与は注意。
- 精神的ストレスが強い場合は、逍遙散類と併用も考慮。
📖 メモ(臨床的要点)
- 「気滞+表寒」を治す穏やかな発散剤。
- 感冒時の精神的ストレスや気鬱を伴うときに最適。
- 女性の風邪・神経性胃腸炎・季節の変わり目の体調不良などに幅広く応用。
- 「胃腸型風邪」「ストレス風邪」と覚えると使いやすい。
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