桂枝人参湯（けいしにんじんとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	桂枝人参湯（けいしにんじんとう）
出典	『金匱要略』
分類	温中補虚剤・健脾和胃剤
保険適用エキス製剤	桂枝人参湯（ツムラ87、クラシエ87など）
構成生薬	桂枝・人参・白朮・甘草・乾姜

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	温中補虚、健脾利水。
主治	脾胃虚寒による腹痛、下痢、倦怠、食欲不振、手足の冷え。 下痢が続き、体力が衰えた状態。
病機	脾胃陽虚により運化失調し、水穀が停滞、寒湿内盛となる。 桂枝で温陽、乾姜で温中、人参・白朮で脾を補い、甘草で調和する。
現代的適応	慢性胃腸炎、過敏性腸症候群（IBS）、下痢型体質、冷え性、慢性疲労など。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
使用目標（証）	体力中等度以下、顔色不良、倦怠感、冷え、軟便または下痢を繰り返す。 腹部軟弱で冷感あり。食欲不振。
体質傾向	虚弱体質、冷え性、胃腸虚弱。
舌診	淡白舌、白苔、湿潤。
脈診	沈緩または弱。

💊 構成生薬と作用

生薬名	主要作用
桂枝	温経散寒、気血の流れを促進。
人参	補気健脾、益胃生津、消化吸収を助ける。
白朮	健脾燥湿、利水止瀉。
乾姜	温中散寒、脾胃を温めて下痢を止める。
甘草	補中益気、調和諸薬、止痛。

🩺 現代医学的な理解

• 胃腸運動調整作用（過敏性腸症候群の改善）。
• 消化吸収機能を高める。
• 冷え性・自律神経失調の改善。
• 免疫・代謝機能を向上させる。

⚠️ 使用上の注意

• 実熱・便秘体質には不向き。
• 長期間の過量服用により、口渇や動悸を生じることがある。
• 体力が極端に低下している場合は、少量から使用。

💬 臨床応用例

• 慢性胃腸炎、下痢型過敏性腸症候群。
• 冷えや疲労による腹痛・軟便。
• 食欲不振、消化不良、胃もたれ。
• 手足の冷え、倦怠感、貧血傾向。

🌱 類方鑑別

比較方剤	相違点
人参湯	桂枝を含まず、より純粋な脾胃虚寒の腹痛・下痢に適す。
真武湯	冷え・水滞が強く、浮腫・めまい・下痢を伴う場合に適す。
附子理中湯	より強い寒証で、激しい下痢や冷痛を伴う場合に用いる。
桂枝加苓朮附湯	関節痛や浮腫など、水滞を主とする冷えに適す。

📖 メモ

• 桂枝湯に健脾温中の薬（人参・白朮・乾姜）を加えた構成。
• 「胃腸が冷えて弱る」タイプの基本方剤。
• 下痢・腹痛・冷えの三主徴がポイント。
• 消化不良・慢性下痢体質の根本改善に有効。