桂枝加厚朴杏仁湯(けいしかこうぼくきょうにんとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名桂枝加厚朴杏仁湯(けいしかこうぼくきょうにんとう)
出典『金匱要略』
分類解表化気剤(風寒表証+気滞・咳嗽)
保険適用エキス製剤桂枝加厚朴杏仁湯(ツムラ27、クラシエ27など)
構成生薬桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草・厚朴・杏仁


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能解表宣肺降気平喘
主治風寒感冒で咳嗽や喘鳴を伴う者。
悪寒・発熱・咳・痰・胸部圧迫感など。
病機外感風寒が表にあり、肺気が鬱滞して咳嗽・喘鳴を生じる。
桂枝湯で解表しつつ、厚朴・杏仁で気の滞りと咳を治す。
現代的適応かぜ、気管支炎、軽度の喘息、咳嗽、気道炎症、咽喉違和感。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度、風寒感冒で咳や痰が目立つ。
発汗は少ない〜微汗、悪寒・咽喉違和感・胸のつかえを伴う。
体質傾向風邪をひくと咳が出やすい、気道過敏、喘鳴傾向。
舌診淡紅舌、薄白苔
脈診浮緩または浮弱


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
桂枝発汗解表、血行促進、寒邪を除く。
芍薬筋肉の緊張を緩和し、疼痛・咳嗽を和らげる。
厚朴行気除満、降気平喘。胸腹部のつかえを解消。
杏仁宣肺止咳、下気平喘、痰の排出促進。
生姜発汗解表、胃腸を温め、風寒を除く。
大棗脾胃を保護し、虚弱を防ぐ。
甘草諸薬を調和し、鎮咳緩和作用。


🩺 現代医学的な理解

  • 鎮咳・去痰作用:風邪・気管支炎の咳を緩和。
  • 気管支平滑筋弛緩作用:喘鳴や息苦しさを改善。
  • 抗炎症作用:上気道炎、気道過敏の軽減。
  • 抗アレルギー作用:軽度のアレルギー性咳嗽にも応用。
  • 自律神経調整:胸部圧迫感・気鬱感を緩和。


⚠️ 使用上の注意

  • 発熱・咽喉痛・黄色痰など熱証が強い場合は不適。
  • 実証や気滞が強い場合は別方(麻杏甘石湯など)を検討。
  • 慢性咳で痰が多い場合は加味清肺湯などと比較。


💬 臨床応用例

  • 風寒感冒で咳・喘鳴を伴う場合。
  • 風邪をひいた後の残咳。
  • 軽度の気管支炎・気管支喘息。
  • 咽喉違和感、胸部のつかえ、息苦しさ。
  • 寒冷刺激で咳が出やすいタイプ。


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
桂枝湯表証中心で咳は少ない。咳嗽が加わったら厚朴・杏仁を加える。
麻黄湯無汗・悪寒・喘鳴が強い実証に使用。
小青竜湯寒痰・水様痰・鼻水を伴う咳嗽に用いる。
麻杏甘石湯熱性咳嗽や喘息など実熱証に使用。


📖 メモ

  • 桂枝湯に厚朴・杏仁を加えて、咳嗽・喘鳴に対応させた方剤。
  • 表証を発散しつつ、肺気の鬱滞を除く働きがある。
  • 「風邪+咳」の初期に用いやすく、体力中等度の人に適する。
  • 桂枝湯系の中でも呼吸器症状に特化した変方。

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