桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

📘 基本情報

項目内容
方剤名桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
出典『金匱要略』
分類解表和中剤(表虚証+腹痛・腸気滞)
保険適用エキス製剤桂枝加芍薬湯(ツムラ60、クラシエ60など)
構成生薬桂枝・芍薬(倍量)・生姜・大棗・甘草


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能調和営衛緩急止痛
主治腹痛・下痢・腸蠕動異常を伴う腹部の張り。
腹鳴・疝痛・冷えなどを伴う。
病機表虚衛気不和)により内に寒滞し、腸の気機が乱れて疝痛や下痢を生ずる。
芍薬を増量して筋肉の緊張を緩め、痛みを止める。
現代的適応過敏性腸症候群(IBS)、慢性下痢、腹痛、腸けいれん、神経性胃腸症など。


🌡 臨床的特徴

観点内容
使用目標(証)体力中等度またはやや虚証で、腹部膨満・軟便・下痢・腹痛を訴える。
腹部を温めると楽になる。脈はやや緩、腹直筋攣急(腹筋緊張)を伴う。
体質傾向胃腸が弱く、冷えや緊張で下痢・腹痛を起こしやすい。
舌診淡紅舌、白苔
脈診緩または虚


💊 構成生薬と作用

生薬名主要作用
桂枝発汗解表、血行促進、気血を調える。
芍薬(倍量)養血柔肝、止痛緩急。腸のけいれんや腹痛を鎮める。
生姜温中散寒、胃腸機能を助ける。
大棗脾胃を補い、虚弱を防ぐ。
甘草調和諸薬、緩和作用、鎮痛補中。


🩺 現代医学的な理解

  • 鎮痙作用:腸平滑筋の緊張を緩和。
  • 抗ストレス作用:自律神経失調に伴う腹部症状を改善。
  • 整腸作用:下痢・軟便・腹鳴を改善。
  • 抗炎症作用:慢性腸炎や腸管過敏を軽減。


⚠️ 使用上の注意

  • 実証で便秘・腹部膨満が強い場合は不適。
  • 芍薬含有量が多く、過量では軟便傾向を強めることがある。
  • 冷えによる下痢に良いが、熱性下痢には用いない。


💬 臨床応用例

  • 過敏性腸症候群(IBS)による腹痛・下痢。
  • 神経性下痢、ストレス性腹痛。
  • 慢性腸炎、腸けいれん、便がゆるく腹鳴する。
  • 月経時の腹痛(軽度)にも応用される。


🌱 類方鑑別

比較方剤相違点
桂枝湯表証中心で腹痛は軽い。腹痛・下痢があれば芍薬を倍量して本方。
桂枝加芍薬大黄湯腹痛と便秘を伴う場合に用いる。
小建中湯虚弱で冷え・腹痛が強く、疲労や倦怠が目立つ場合。
当帰芍薬散冷え性・貧血傾向で浮腫やめまいを伴う女性に多用。


📖 メモ

  • 桂枝湯に芍薬を倍量加え、腹痛や下痢などの腸症状に対応。
  • 「腹が鳴る」「お腹が冷えると痛い」「下痢しやすい」タイプに最適。
  • 精神的緊張で腹痛を起こす神経性腸症にも応用される。
  • 桂枝湯系列の中でも、最も腹部症状に焦点を当てた方剤。

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