八味地黄丸(はちみじおうがん)

📘 基本情報

項目内容
方剤名八味地黄丸(はちみじおうがん)
出典『金匱要略』
分類補陽剤腎陽虚証
構成生薬 地黄・山茱萸・山薬・沢瀉・茯苓・牡丹皮・桂枝・附子
方名の由来 八味=八つの生薬から構成されることに由来する。


🧭 方意(効能と主治)

区分内容
効能温補腎陽利水消腫
主治 腎陽虚による諸症状
腰膝の冷痛・倦怠・下半身の冷え・頻尿・夜間多尿・小便不利・むくみ・インポテンツ・不妊・耳鳴・めまい・下肢のしびれなど。
老化・慢性疾患・疲労・虚弱体質による「冷えと衰え」に対応。
病機 腎陽の不足により水液代謝が障害され、冷え・浮腫・頻尿などの症候が生じる。
また、命門火衰により腰膝の力が抜け、下半身の冷感や活力低下が起こる。


💊 構成生薬と作用

生薬主な作用
地黄滋陰補血・腎精を養う(六味地黄丸の主薬)。
山茱萸補肝腎・収渋固精。腎の漏れを防ぐ。
山薬補脾益腎・健胃。滋養して体力を支える。
沢瀉利水滲湿。腎陰を清し、余分な水分を排出。
茯苓健脾滲湿・利水。浮腫を軽減する。
牡丹皮清熱涼血・瘀血を除く。陰陽の調和を保つ。
桂枝温陽化気。腎陽を温めて血行を促す。
附子回陽救逆・補火助陽。腎陽を強く温補する。


🌡 臨床的特徴

観点内容
症状の特徴 ・下半身の冷え、腰や膝のだるさ、力が入らない
・排尿異常(頻尿・夜間多尿・尿量減少)
・むくみ、倦怠感、冷え症
・性機能低下(インポテンツ・遺精・不妊)
・老化による衰え、足腰の弱り
体質傾向 陽虚体質・冷え性・疲れやすい・顔色が白い・むくみやすい。
舌象・脈象 舌:淡胖・白苔。
脈:沈・遅・弱。


🩺 現代医学的応用

  • 慢性腎炎・ネフローゼ症候群
  • 前立腺肥大・排尿障害・夜間頻尿
  • 糖尿病・高齢者の慢性疲労
  • 腰痛・坐骨神経痛・下肢の冷え・しびれ
  • 更年期障害(冷え・倦怠・性機能低下)
  • 高血圧・動脈硬化など老化性疾患


⚖️ 類方・比較

方剤特徴・鑑別点
六味地黄丸補陰中心。熱感・口渇・のぼせ・ほてりを伴う腎陰虚に。
牛車腎気丸八味地黄丸に利水・止痛薬を加え、浮腫・しびれ・排尿困難を伴う場合に。
真武湯陽虚による水滞で、特に浮腫・眩暈・冷えが強い場合に。


⚠️ 使用上の注意

  • 実証・熱証には不向き。
  • 口渇・のぼせ・便秘など熱症状が出る場合は中止・変更を検討。
  • 附子・桂枝を含むため、高熱・炎症時は避ける。


📖 メモ(臨床要点)

  • 「腎陽虚」の基本方剤。六味地黄丸に温陽薬(桂枝・附子)を加えて補陽化気の力を強化した。
  • 高齢者の「冷え・疲れ・頻尿・夜間多尿・腰膝無力」に非常に適する。
  • 「老化による機能低下」全般に応用できる。
  • 腎を温め、水を動かし、精を養うという三つの働きを持つ。

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