📘 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方剤名 | 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん) |
| 出典 | 『済生方』 |
| 分類 | 補腎助陽剤(腎陽虚・水腫・下肢の冷えやしびれに) |
| 保険適用エキス製剤 | 牛車腎気丸(ツムラ107、クラシエ107など) |
| 構成生薬 | 地黄・山茱萸・山薬・茯苓・牡丹皮・沢瀉・桂枝・附子・牛膝・車前子 |
🧭 方意(効能と主治)
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 効能 | 温補腎陽、利水消腫、強腰膝、止痛。 |
| 主治 | 腎陽虚による腰膝の冷痛・しびれ・尿量異常(頻尿・排尿困難・夜間多尿)・むくみ・下肢の冷感など。 慢性腎疾患、糖尿病性末梢神経障害、腰部脊柱管狭窄症などにも応用。 |
| 病機 |
老化・慢性疾患・過労などにより腎陽が衰え、気化不利となり、水の代謝が滞る。 そのため、冷え・むくみ・腰膝の痛み・排尿異常が生じる。 地黄・山茱萸・山薬で腎陰を補い、桂枝・附子で陽を助け温め、沢瀉・茯苓・牡丹皮で水をさばき、牛膝・車前子で下焦を通利して水滞を除く。 |
🌡 臨床的特徴
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 典型的症状 |
・下半身の冷え、むくみ、倦怠感 ・腰痛、膝痛、しびれ、足のだるさ ・夜間頻尿、排尿困難、尿量減少または多尿 ・下肢の冷感・乾燥感・感覚鈍麻 ・高齢者、慢性病体質、疲れやすい |
| 体質傾向 | 腎陽虚体質(冷え、代謝低下、疲労、むくみやすい)。 |
| 舌診 | 淡胖、白苔、湿潤。 |
| 脈診 | 沈・弱・遅。 |
💊 構成生薬と作用
| 生薬 | 主要作用 |
|---|---|
| 地黄・山茱萸・山薬 | 補腎滋陰、精を養う(六味丸の基礎部分)。 |
| 茯苓・沢瀉・牡丹皮 | 利水滲湿、清熱泄濁(水滞・瘀熱を除く)。 |
| 桂枝・附子 | 温陽化気、寒を除き、腎陽を助けて下焦を温める。 |
| 牛膝 | 補肝腎、強筋骨、利尿通経。腰膝を丈夫にし、血行促進。 |
| 車前子 | 清熱利尿、通淋止渇。尿の出をよくし、むくみを取る。 |
🩺 現代医学的な理解
- 腎機能改善作用:糸球体・尿細管の血流改善、水分代謝促進。
- 神経保護作用:糖尿病性末梢神経障害における感覚異常の改善。
- 利尿・浮腫改善作用:体液循環の促進、腎血流量の上昇。
- 血流改善・抗酸化作用:冷えや血行不良による疼痛・しびれの緩和。
💬 臨床応用例
- 下肢の冷え・しびれ・倦怠感。
- 腰痛・膝痛・坐骨神経痛・脊柱管狭窄症。
- 夜間頻尿・排尿困難・慢性腎炎・前立腺肥大。
- 糖尿病性末梢神経障害・浮腫・しもやけ。
- 老年性虚弱・易疲労・冷え体質。
⚖️ 類方鑑別
| 方剤名 | 鑑別点 |
|---|---|
| 八味地黄丸 | 牛膝・車前子を含まず、下肢症状(しびれ・浮腫)が軽い場合。 |
| 真武湯 | 腎陽虚+水滞で、下痢・めまい・浮腫などを伴う場合。 |
| 桂枝加苓朮附湯 | 冷えや水滞はあるが、腎虚ほどの全身倦怠はない場合。 |
| 六味丸 | 腎陰虚主体で、熱感・口渇・のぼせなどを伴う場合。 |
⚠️ 使用上の注意
- 実熱・口渇・のぼせ・便秘などがある場合は不向き。
- 胃腸虚弱者では附子・桂枝の刺激で胃部不快感を起こすことがある。
- 体温が高い・炎症性疾患の急性期には使用を避ける。
📖 メモ(臨床的要点)
- 八味地黄丸に牛膝・車前子を加えて、下肢の血流・利尿を強化した方剤。
- 「腎虚+水滞」による下肢症状がある場合に最も適す。
- 冷え性・老化・排尿障害・しびれ・むくみを総合的に改善。
- 慢性疾患・高齢者の「足腰のだるさと冷え」に第一選択となることが多い。
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