概要
活血消腫(かっけつしょうしゅ)とは、血行を促進して瘀血(おけつ)を除き、腫脹や疼痛を軽減する治法である。 主として外傷・打撲・手術後・炎症・毒邪・瘀血滞留などによって局所の気血運行が阻滞し、腫脹・疼痛・発赤などを呈する場合に用いられる。 この治法は、活血化瘀を基本としつつ、清熱・解毒・消腫の効能を併せもつ方剤を応用する点が特徴である。
「活血」は血行を促し瘀血を除くこと、「消腫」は腫脹や炎症性浮腫を軽減することを意味する。 したがって、本法は血滞と腫脹が並存する病態に対して、循環改善と抗炎症を同時に行う治療原則である。
主な適応症状
- 打撲・捻挫・骨折後の腫脹と疼痛
- 瘀血による局所の発赤・熱感・腫脹
- 化膿性腫脹(初期または回復期)
- 術後の腫れ・血腫残留
- 慢性炎症後の硬結・瘢痕
- 舌質暗紅・瘀点・脈渋
これらは、気血の運行が阻滞し、瘀血と水湿・熱毒が結して腫脹を形成した結果生じる。 活血によって血流を改善し、消腫によって炎症と浮腫を除くことで、腫痛が軽減される。
主な病機
- 外傷・打撲・瘀血停滞 → 血行阻滞 → 腫脹・疼痛。
- 熱毒壅滞 → 血脈閉塞 → 炎症性腫脹。
- 湿滞気滞 → 水分循環不暢 → 浮腫。
したがって、活血消腫法は、瘀血を去り、血行を改善して腫脹を消散させることを目的とし、 必要に応じて清熱解毒・行気・利湿などを併用する。
主な配合法
- 活血消腫+清熱解毒:熱毒壅滞による赤腫熱痛(例:五味消毒飲、仙方活命飲)。
- 活血消腫+行気止痛:気滞血瘀による腫脹疼痛(例:復元活血湯)。
- 活血消腫+化瘀止痛:打撲・骨折後の血腫残留(例:正骨紫金丹、活絡油)。
- 活血消腫+利湿:水湿停滞による浮腫や関節腫張(例:加味二妙散)。
- 活血消腫+補気活血:術後の気血両虚・瘀滞(例:補陽還五湯)。
代表的な方剤
- 仙方活命飲(せんぽうかつめいいん):清熱解毒・活血消腫。化膿性腫脹・乳腺炎・瘡癤に。
- 復元活血湯(ふくげんかっけつとう):行気活血・消腫止痛。打撲・挫傷の腫痛に。
- 桃紅四物湯(とうこうしもつとう):活血化瘀・調経・消腫。瘀血性腫脹・皮下血腫に。
- 正骨紫金丹(しょうこしきんたん):活血消腫・接骨止痛。骨折・打撲・腫脹に。
- 五味消毒飲(ごみしょうどくいん):清熱解毒・消腫散結。熱毒性腫瘍や化膿腫に。
- 補陽還五湯(ほようかんごとう):補気活血・消腫。中風後遺症や瘀血腫脹に。
臨床でのポイント
- 腫脹の性質(赤熱・硬・軟・冷)により、清熱・温経などの併用を検討する。
- 外傷や打撲による急性期には、冷罨法や清熱解毒薬を、慢性期には温経活血薬を用いる。
- 化膿傾向がある場合は、清熱解毒を加えて排膿を促す。
- 瘀血除去と同時に、再生・修復を促すために補気・養血薬を併用することも有効。
- 体質虚弱や血虚の患者では、峻烈な活血薬の使用を避ける。
まとめ
活血消腫法は、血行を促進して瘀血を去り、腫脹・炎症・疼痛を軽減する基本治法である。 外傷・炎症・術後・瘀血による腫脹などに広く応用され、 代表方剤には仙方活命飲・復元活血湯・五味消毒飲・正骨紫金丹などがある。 急性期は清熱・解毒・止痛を、慢性期は温通・活血・補気を重視することで、 より良い治療効果が得られる。
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