桂麻各半湯（けいまかくはんとう）

📘 基本情報

項目	内容
方剤名	桂麻各半湯（けいまかくはんとう）
出典	『金匱要略』
分類	解表剤・辛温解表
構成生薬	桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草・麻黄・杏仁
構成比	桂枝湯と麻黄湯を各半量ずつ配合（五味＋二味）
現代製剤	単独製剤は稀（調合例として使用）

🧭 方意（効能と主治）

区分	内容
効能	解肌発表、調和営衛。
主治	悪寒発熱・頭痛・関節痛・鼻閉・咳嗽などの表寒証。 体力中等度で、発汗はあるいは少なく、無汗でも過度でない場合。
病機	外感風寒が肌表を犯し、営衛不和となり、悪寒・発熱・頭痛を呈する。 麻黄湯ほど実ではなく、桂枝湯ほど虚でもない中間の証に用いる。

🌡 臨床的特徴

観点	内容
典型的症状	・悪寒と発熱が同程度にある ・汗は出たり出なかったり（中間的） ・頭痛・関節痛・肩こり・筋肉痛 ・鼻づまりや軽い咳 ・身体の節々の痛み
体質傾向	体力中等度、虚でも実でもないタイプ。
舌診	淡紅、薄白苔。
脈診	浮・緩。

💊 構成生薬と作用

生薬	主要作用
桂枝	解肌発表、調和営衛。発汗を助け、寒邪を散らす。
麻黄	発汗解表、平喘止咳。外寒を散らす主薬。
芍薬	養営緩急、筋肉のこわばりや痛みを緩和。
生姜	助陽散寒、健胃解表。
大棗	補中益気、営衛を和す。
甘草	調和諸薬、鎮痛・抗炎症。
杏仁	止咳平喘、肺気を下す。

🩺 現代医学的な理解

• 風邪・インフルエンザ初期：筋肉痛・関節痛を伴う悪寒発熱に有効。
• 関節リウマチ・神経痛：寒冷や気候変化によって症状が増悪するタイプに。
• アレルギー性鼻炎・感冒後の咳：鼻閉や軽い咳を伴うときに応用。

⚖️ 類方鑑別

方剤名	鑑別点
桂枝湯	体力がやや弱く、自然発汗がある。悪風・寒気・頭痛。
麻黄湯	体力が強く、悪寒が強くて無汗。関節痛・咳が顕著。
桂麻各半湯	その中間。発汗の有無がはっきりしない・中等度の体力。
小青竜湯	水様鼻汁・咳・喘鳴が強く、寒性の痰が多い場合。

💬 臨床応用例

• 感冒（風寒型）で悪寒・発熱・頭痛・関節痛。
• インフルエンザ初期の悪寒・全身倦怠感。
• 寒冷で増悪する肩こり・筋肉痛。
• 気候変化によるリウマチ痛・神経痛。
• 鼻閉・軽度の咳を伴う風邪の初期。

⚠️ 使用上の注意

• 体力が虚弱な人、汗が自然に出ている人には発汗過多に注意。
• 強い実証・高熱・喉の痛みなどには不向き。
• 発汗後には体を冷やさないよう注意。

📖 メモ（臨床的要点）

• 「桂枝湯」と「麻黄湯」の中間証。どちらか迷うときの中庸処方。
• 「発汗の有無」が判然としない感冒に適する。
• 穏やかに発汗させつつ、体を温めて表寒を除く。
• 関節痛・筋肉痛などの「寒による疼痛」にも応用可能。